2015年2月20日 (金)

高尿酸血症と低尿酸血症

 

高尿酸血症とは、尿酸値が7.0mg/dLを超える場合を言います。起こりうる症状や疾患は、①尿酸塩の結晶によっておこるものとして、(1)痛風(尿酸 Na 針状結晶による関節炎 70%は足の親指付け根の関節におこります。)、(2)尿路結石(腎臓や尿管に結石)、(3)痛風腎(尿酸そのものや尿酸塩による腎機能障害)、(4)痛風結節(無痛の肉芽腫 関節・耳介・皮下組織)などがあります。②尿酸塩によらずに、血液中の尿酸が多いことによって血管障害がおこり、動脈硬化の原因になりうると言われています。高血圧、虚血性心臓病や脳梗塞のリスクが高くなります。
 高尿酸血症の原因は何でしょうか。①尿酸の排泄低下 これには、腎臓からの排泄低下(肝臓で作られる尿酸700mgのうち7割の500mg)の場合と、腸管からの排泄低下(3割の200mg)があります。腸管からの排泄が低下していることを、直接証明することが現在は不可能なので、この排泄低下の結果おこる高尿酸血症は、次の産生過剰とみなされます。②尿酸の産出過剰 この原因は、一部の遺伝的なプリン代謝酵素異常を除いては判っていません。実際には①のうちの腸管からの排泄低下も含まれています。
高い尿酸値を下げるにはどのような方法があるでしょうか。①尿酸産生を抑制する。そのためには、(1)尿酸の原料となる食品摂取を減らす(プリン体の多い食材を減らす。動物の内臓・魚の干物や乾物など)、(2)体内での産生を減らす(内臓脂肪を減らす。糖質の摂りすぎを避ける。)(3)薬剤で減らす アロプリノール(腎臓排泄型)とフェブキソスタット(胆汁排泄型)があります。②腎臓からの排泄を薬剤で増加させる。(1)尿細管での尿酸の再吸収を抑制する。プロベネシド、ベンズブロマロン (2)腎臓からの尿酸排泄促進 ブコローム(消炎鎮痛薬) ②排泄阻害を避ける。アルコールを摂り過ぎない、激しい運動を避ける(これらは乳酸を増やすので、乳酸排泄が優先され尿酸排泄が抑制される) ③腸管からの排泄増加 これに関してはまだ治療法不明です。

尿酸塩の結晶による障害を減らすためには、①酸性で結晶化するので、尿のpHを下げないようにします。アルカリ性食品(海藻類 干しシイタケ 大豆 ホウレン草 ゴボウ など)の摂取、アルカリ化剤(クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム配合剤)の服用 ②冷やすと結晶化しやすいので足先などを冷やさない ③関節に強い力がかかり続けると痛風発作が起きやすいので、そのような運動を避ける。などがあります。
 低尿酸血症という病気もあります。尿酸値2.0mg/dL以下を言います。原因は、①尿酸産生低下 これは非常に稀な遺伝的疾患です。尿酸になる前の物質の沈着で関節炎が起きたり尿路結石が出来たりします。②腎臓での尿への尿酸排泄亢進 (1)再吸収障害 A尿細管障害による続発性 B遺伝的な原因による特発性 (2)分泌亢進 (3)一過性の低尿酸血症 頸静脈的高カロリー輸液、糖尿病、悪性腫瘍、SIADH、薬剤など。
低尿酸血症の人の合併症として運動後腎不全症候群があります。尿酸には活性酸素を除去する作用があるので、尿酸が少なすぎると活性酸素の害が出てしまうのです。やや激しい運動(無酸素運動)の数時間後に腎臓の血流低下による尿細管障害による急性腎不全が起こることがあります。自覚症状としては運動後の腰背部痛・嘔気嘔吐です。風邪をひいていて無理をしたり解熱鎮痛薬を服用しながら運動したりした後に起こりやすいと言われています。また、普段から尿中の尿酸が多いので尿路結石を生じ易くなります。
また、尿酸値が低いほどアルツハイマー病などの脳の変性疾患にかかり易いという報告もあります。

 この頃、尿酸値がかなり低い高齢者の方が見受けられるので、気になっています。

平成南町クリニック 玉田

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2015年1月20日 (火)

医療機関や介護施設でのインフルエンザ対策

Hatsunetsu_kodomo  日本感染症学会は、2012年に「インフルエンザ病院内感染対策の考え方について(高齢者施設を含めて)」の提言を行っています。

 

院内・施設内でインフルエンザ発症者が出た場合、感染対策の一層の徹底化に加えて、抗インフルエンザ薬(タミフルかリレンザ)の予防投与を早期から積極的に行う事を勧めています。予防投与の対象者は、状況に応じて同一病室内(居室内)、同一フロア、入所者全員などに広げて考えることになっています。また、職員間でインフルエンザ発症が続く場合には職員への予防投与を考慮するよう勧めています。予防投与に伴う懸念や副作用は、予防投与の利益がはるかに大きいと考えられるとしています。実際に予防投与を行うことによる効果があったとする報告も見られます。米国や英国でも同様の対応策を発表しているようです。
重篤な副作用なく二次感染者を減らすことができれば、インフルエンザの重症感染者を減らすことになり大変喜ばしいことです。

 しかしながら、2014年4月の英国医師会雑誌には、2万4千人以上を対象とした最新のコクランレビュー「健康な成人と小児でのインフルエンザ予防と治療のためのノイラミニダーゼ阻害剤(抗インフルエンザ薬タミフルとリレンザについての検討)」において次のように報告しています。

 

予防投薬で精神イベントのリスクが約1%増加した。予防投薬は症候性インフルエンザのリスクを低減しうるが、インフルエンザ感染者がウィルスを運び、他者へ広げることを防ぐという効果は証明されていない。つまり、インフルエンザのヒト間の伝染を予防するためのタミフルの使用は十分な根拠がないと結論しています。

 

この研究結果が事実なら、感染対策上は少なくとも健康な人へのタミフルの予防投薬は無意味であり、感染防御対策を徹底するしかないことになります。即ち、インフルエンザウィルスを貰わない・与えないことに専念する必要があります。具体的には、
 ①環境を触った手で自分の口・鼻を触らない。そのためにマスクをして口・鼻に触れないようにしておく。
 ②院内・施設内で他者に会う時はマスクをして直接飛沫を浴びることを減らす。
 ③自分に症状が無くても自分の口・鼻を触った手で環境を触らない。そのためにマスクをして口・鼻に触れないようにしておく。
 ④マスクをして、自分の咳・くしゃみ・鼻水を直接外部に出さないようにする。

 もし家庭内に発症者がおられたら、同様の感染防御対策が必要と思います。

 当クリニックにおいても上記の考えでマスクをしたまま診察をすることが多いですが、ご了承下さいますようお願い致します。

                       平成南町クリニック 玉田

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2014年12月20日 (土)

高コレステロール血症の治療

 

動脈硬化による心筋梗塞や脳梗塞などの疾患を予防したり再発を防ぐために、コレステロール特にLDLコレステロール値を下げるように生活習慣に注意することが重要ですが、どうしても下がらない時には、スタチン系と呼ばれる薬剤を服用することが一般的です。
どれくらいのLDLコレステロール値まで下げるようにするかは、一人一人の患者さんによって目標値が異なります。(動脈硬化性疾患予防ガイドラインなど)

 しかし、その目標値によってスタチン系薬剤を使用するかしないかは疾患治療としての証拠がないとして、米国心臓病学会と米国心臓病協会の2013年ガイドラインでは、「スタチンを使う利益のある集団」にスタチンを使用することを推奨しています。(当てはまらない人にはスタチンを使用しない)
①アテローム性動脈硬化症の臨床症状のある人(既に発症している人の再発予防)
②甲状腺機能低下症やネフローゼ症候群などの二次性脂質異常症ではない人でLDLコレステロール値が190mg/dL以上の人
③糖尿病患者さんでLDLコレステロール値が70~189mg/dLの40歳から75歳までの人
④アテローム性動脈硬化症発症リスク(年間)が7.5%以上の非糖尿病患者さん(発症リスクは、年齢・人種・コレステロール値・HDLコレステロール値・血圧・降圧薬の有無・糖尿病既往の有無・喫煙の有無の各因子を入力して算出するリスクスコア計算ツールがあります)

 76歳以上の患者さんをどのように考えたらよいのかと悩みますが、動脈硬化性疾患予防ガイドラインでも75歳以上では証拠がないとして「目標値」は定められていません。
 スタチンを使用して治療した方が良いのかどうかを決めるのは、様々な「証拠」があって、実際には患者さんと相談しながら治療医が判断することにはなりますが、様々な証拠があるのでますます悩むばかりです。

平成南町クリニック 玉田

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2014年11月20日 (木)

「風邪」の診断は難しい

寒い時期になると「風邪」をひく人が多くなります。しかし、「風邪」と診断するのは実は大変難しいです。
典型的な「風邪」症状とは、咳・鼻水・咽頭痛がそれぞれほぼ同程度に揃って出ている状況です。熱を伴う事が多いですが熱・咳・鼻水・咽頭痛のどれかが単独ないし際立っている場合には「風邪」と考えない方が安全です。そのような症状が出る疾患には様々なものがあります。(参考書 岸田直樹著 誰も教えてくれなかった「風邪」の診かた 医学書院、山本舜悟編著 かぜ診療マニュアル 日本医事新報社)

 岩田健太郎氏(神戸大学医学部附属病院感染症内科)によれば、「風邪」とはあえて定義すると、「その時点で抗生剤を使わなくても治ると見込めると判断された上気道症状」という事になるようです。(メディカルサイエンス社 臨床クルズス シリーズ2「風邪クルズス」P87) この定義は確実さには欠けますが、治療計画を立てる上では明解です。

 では、どのような時に「抗生剤を使わなくても治る」と見込めるのでしょうか。感染症でなくても「風邪」症状が出ることはありますが、感染症とした場合、ウィルス性9割、細菌性1割と言われています。細菌性であれば菌種の検討が必要ですが、抗生剤が有効なはずです。しかし9割の人には抗生剤は不要な薬となります。

必須でない時に抗生剤を使用しない理由は、
①不必要なアレルギー(薬疹 喘息 アナフィラキシーなど)を起こさせない、
②臓器障害(下痢 肝障害 腎障害 心疾患死亡率を高める「アジスロマイシン」 血糖異常「キノロン薬」など)を防ぐ、
③耐性菌を増加させない、
④偽膜性腸炎の遠因を作らない
 など です。

 こう考えます。風邪症状の原因微生物の吟味は時に困難であるので、軽症か中等症・重症か、免疫状態は良好か不良かで判断する。
 合併症のない非超高齢者あるいは非乳幼児は免疫状態良好と考える。軽症で免疫状態が良好であれば抗生剤が無くても普通に治る。
 重症であっても検査により明らかにウィルス性と判断され、それ以外の可能性が非常に低ければ抗生剤は不要。
 逆に、軽症でも溶連菌感染症のように抗生剤治療が必須の時や経過中に細菌性感染症の所見が出てきた場合は、抗菌薬を使用する。

抗生剤を使用しても最初の判断通りに経過するとは限りません。抗生剤を使用しない場合には経過を知ることがより重要となります。

Minamibar

平成南町クリニック 院長 玉田

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2014年10月20日 (月)

臓器のエネルギー源

 私たちの体のエネルギー源はブドウ糖だけだと思ってはおられませんか? エネルギー源は臓器や細胞ごとに少しずつ異なっています。糖尿病の治療とも関わりがありますので、整理してみましょう。

脳のエネルギー源:ブドウ糖とケトン体。脳細胞のエネルギー源はブドウ糖だけではありません。脳はブドウ糖しか利用できないと思っている方は考えを変えて下さい。脳細胞はケトン体をエネルギー源として利用できます。細胞内のミトコンドリアは脂肪酸からもエネルギーを得ることができますが、脂肪酸は脳血管関門を通ることができないので、脳細胞はブドウ糖とケトン体を利用します。実は、胎児や新生児の血中ケトン体の濃度は高く、脳は主にケトン体を使用しています。糖尿病の合併症にケトアシドーシスがありますのでケトン体を有害物質と思っている人が多いようですが、有害どころか有益なエネルギー源なのです。糖尿病でない妊婦さんでも多くの人は血中ケトン体が高くなっています。インスリン作用が働いている限り、ケトン体が多いだけではケトアシドーシスにはなりません。また、ケトン体をうまく利用できる状況があれば、血糖値がかなり低くても低血糖による意識障害は起こりにくいのです。絶食時や飢餓状態で血糖値が低くなれば脳細胞は積極的にケトン体をエネルギー源にしています。

骨格筋:激しい運動時にはグリコーゲンからのブドウ糖を使用しますが、長時間運動やさほど強くない運動時には脂肪酸をエネルギー源にします。

心筋:重労働時には骨格筋と同じようにグリコーゲンからのブドウ糖を使いますが、通常は脂肪酸、ケトン体、ブドウ糖、ピルビン酸、乳酸などをエネルギー源にします。

肝細胞:ブドウ糖・脂肪酸・アミノ酸を使用しますが、ケトン体はエネルギー源にしません。

網膜:主にはブドウ糖です。

赤血球:赤血球は核を持たないので核の中にあるミトコンドリアもありません。したがって利用できるエネルギー源はブドウ糖だけです。ブドウ糖が必須なのは赤血球だけです。赤血球に必要なブドウ糖は、炭水化物を摂らなくても、肝臓で脂肪やアミノ酸から作りだすことができます。(これを糖新生と言います。肝硬変やインスリン抵抗性を減らすとされる糖尿病薬を服用している人は、糖新生がうまくできません。)

小腸のエネルギー源:アミノ酸の一種のグルタミン酸。

大腸のエネルギー源:短鎖脂肪酸。食物繊維を直接分解する酵素をヒトは持っていませんが、ヒトの腸内細菌は食物繊維を分解して短鎖脂肪酸を作ります。大腸の細胞は、この短鎖脂肪酸をエネルギー源にしているのです。余分な短鎖脂肪酸は血液に入り他の臓器のエネルギー源になります。(もし大量に生成できれば、私たちも草食動物のように草を食べて生きていける!?)

Image001  ピースガーデン倉敷やグランドガーデン南町に入居されている糖尿病や肥満の方々へ、主食の米飯を減らし減量やデータの改善が得られています減量目的でない場合は合併症を悪化させない程度に蛋白質や脂肪の摂取を増やすようにしてもらっています。すなわち適切なカロリーを摂取しつつ、余分な糖質を減らす低糖質食を勧めています。提供できる食事そのものを「低糖質メニュー」にして欲しいのですが、施設では現状のメニューを変えていただけません。

 日本糖質制限医療推進協会の糖質制限通信秋号に糖尿病教育入院に低糖質食を指導実践している病院の紹介がありました。独立行政法人労働者健康福祉機構 鹿島労災病院です。内科医師の呼びかけで管理栄養士の皆さんがメニューを考案されています。この病院の従来の糖尿病食は、糖質エネルギー比57%(高糖質食です)の1440kcal食ですが、低糖質食として、1400kcal食(糖質エネルギー比17% スーパー糖質制限)、1600kcal食(糖質エネルギー比 20% 糖質制限エネルギーアップ用 と 糖質エネルギー比41%の主食テスト用) さらにどうしても米飯がないとだめと言う人用主食テスト用(1700kcal 糖質エネルギー44%)の4種類を用意しています。低糖質食だと確実に血糖値の乱高下が無くなり、退院後も継続することでHbA1cが右肩下がりに改善しているとのことです。糖尿病管理治療に関わる全ての職種の人の意識改革が必要です。

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 私が米飯を減らしましょうとして指導しているのは大凡糖質エネルギー比40%位の「ゆるい糖質制限食」です。それでも効果は十分得られ、特別な問題点は発生していません。現状の提供食は糖質エネルギー比60%になるよう計算したメニューなので、高糖質食なのです。これを基にしてカロリー制限食を指導したり糖尿病治療薬の投与量を決めるのは、どう考えても本末転倒なのです。

写真は、ローズガーデン倉敷(1Fに平成南町クリニック)とグランドガーデン南町の間を行く、阿智神社秋祭り御神幸の皆さん 10月19日

平成南町クリニック 玉田

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2014年9月20日 (土)

ポリファーマシー

 

ポリファーマシーという言葉をご存じでしょうか。ポリファーマシーとは直訳すると「多剤併用」のことです。何種類以上の薬を同時に使用する場合をそう呼ぶかは決まっていませんが、およそ5~10種類以上です。また、単に種類が多いだけでなく、不適切な組み合わせ、必要な薬が使われていない、同じ薬効が重複している、などもポリファーマシーの問題として取り上げられます。
 最近、定期的に受診されている高齢者の方から、「朝から尿を出したくても出なくて苦しい」と連絡がありました。すぐ来院して頂いて導尿を行い750mLの排尿がみられ、楽になったと喜んでいただきました。尿閉になっていたのですが、その原因を考えてみました。以前から頻尿があり他院から膀胱の蓄尿作用を増やす薬が処方されています。普段は排尿困難もなく過ごしておられますが、最近全身麻酔での手術を受け、その際に導尿留置カテーテルを入れていたので、退院後に軽度の排尿困難を感じていたとのことでした。そのため頻尿改善薬が効きすぎて尿閉の原因になったと考えましたが、よく聞くと前日に体の痒みのために皮膚科医院を受診して、抗ヒスタミン薬の処方を受けておられました。その薬を服用してから少し尿が出にくい感じがあったとのことでした。さらに言えば当院でも尿閉の原因になり得る睡眠導入薬や抗不安薬を処方していました。これらが重なって尿閉を引き起こしたと考えられました。
 高齢者への処方が多いほど、薬剤の有害事象が起きやすい とされます。また、処方薬剤が多ければ多いほど、薬剤の不適切使用につながりやすい と言われています。
 このポリファーマシーの弊害を防ぐためにどうすべきかの一つの答えとして以下の質問を提示した論文があります。

1.この薬剤がもともと処方されていた適応症はまだ残っているか?
2.処方箋の中に、有害事象に対して処方された薬剤は入っているか? もしそうなら、元々の薬を中止することはできないか?
3.患者の年齢や腎機能によって、現在の処方量では治療量を下回ったり、毒性を持ったりする可能性はないか?
4.重篤な薬剤相互作用、もしくは薬剤・疾患間での重篤な相互反応はないか?
(以上は、「提言―日本のポリファーマシー」編集:徳田安春 カイ書林 を参考としました。)


 受診回数が増えるに従って様々な症状が重なって来る場合があり、注意していてもいつの間にか「多剤併用」になってしまうことがあります。また、一つの医療機関や診療科では併用薬が少なくても、複数の医療機関や診療科を受診されると容易に「ポリファーマシー」になっていることがあります。
 常に、その患者さんが服用している全薬剤、全ハーブ類を把握することを心掛けて、ポリファーマシーの弊害を少しでも減らすよう努力したいと考えています。
しかしながら、薬剤の相互作用を全て暗記することは不可能なので、その都度調べて確認する作業が必要ですが、外来診療の合間に、私一人で行うのは時間がかかります。また、最近はジェネリック薬品の処方も多く、患者さんから示された薬品がどのようなものか調べないと分からないこともあります。薬剤師の助けを求めたくなりますが、当院には薬剤師はいませんので、時間がかかっても待っていただくことになり、ご迷惑をおかけしています。

平成南町クリニック 玉田

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2014年8月19日 (火)

肺炎球菌ワクチンについて

 本年10月1日から高齢者への肺炎球菌ワクチンが定期接種となります。肺炎球菌ワクチンについて知識を整理しておきましょう。
 一般的に言われている肺炎予防ワクチンは、肺炎球菌ワクチンのことだと思います。20140819_2
予防効果と言う事だけで言えば、インフルエンザワクチン・麻疹ワクチン・Hibワクチンなども広い意味で肺炎予防ワクチンに該当します。肺炎球菌ワクチンは、「肺炎球菌」というグラム陽性双球菌に対するワクチンであり、「肺炎」のみを予防する目的ではなく「肺炎球菌感染症」を予防するためのものです。感染症としての肺炎の原因微生物には、細菌・ウィルス・真菌(カビ)・寄生虫など様々ですが、特定できた原因微生物として統計上で最も頻度の高いのが「肺炎球菌」です。肺炎球菌は莢膜を有しており脾臓を持っていない人や脾臓機能の低下している人にはとても警戒すべき細菌です。(インフルエンザ菌、髄膜炎菌も同様に警戒すべき細菌です)

肺炎球菌が引き起こす感染症は多岐にわたります。結膜炎、中耳炎、副鼻腔炎、気管支炎、肺炎、髄膜炎、敗血症、感染性心内膜炎などです。肺炎球菌ワクチンは、これらの肺炎球菌感染症の発症予防や重篤化予防に効果があるとされます。残念ながら肺炎球菌肺炎に罹らなくすることはできません。もちろん他の微生物が原因の肺炎を予防することは理論的に不可能です。
肺炎球菌ワクチンには2種類あります。製品名で言うと、「ニューモバックスNP」と「プレベナー13」です。肺炎球菌には93種類の血清型があります。ニューモバックスNPは23種類の型に対するワクチンであり、プレベナー13は13種類の型に対するワクチンです。種類の多い方が良いと思われるかもしれませんが、ニューモバックスNPは莢膜多糖体ワクチンであり、小児や高齢者などでは抗体価の上昇が得られにくいという特性があります。(肺炎球菌による肺炎の減少は疫学的に認められていませんが、菌血症は減少できているようです。)皮下注射・筋肉注射どちらでもよいとなっています。一方、プレベナー13はジフテリアトキソイドを結合させてTリンパ球に認識され免疫的に有効性が高くなっています。小児では皮下注射ですが、高齢者には筋肉注射します。(小児へは2013年6月から認可されていましたが、2014年6月20日から65歳以上の者にも認可されました。)
さて、本年10月1日から高齢者への肺炎球菌ワクチンが定期接種となります。平成27年3月31日までは、平成26年度に、65,70,75,80,85,90,95,100歳になる方と101歳以上の方が対象となります。平成27年度から平成30年度までは、該当する年度に65,70,75,80,85,90,95,100歳になる方と101歳以上の方が対象となります。また、60歳以上65歳未満の方も心臓・腎臓・呼吸器の機能に自己の身辺の日常生活活動が極度に制限される程度の障害がある方や、ヒト免疫不全ウィルスによる免疫の機能に日常生活がほとんど不可能な程度の障害がある方は定期接種の対象になります。

高齢者の定期接種に使用されるワクチンはニューモバックスNPです。(先に述べたように、このワクチンは高齢者や免疫低下の人では肺炎球菌感染の重篤化を減少させるものの、肺炎予防効果は十分とは考えられていません。プレベナー13は定期接種には使用されませんが、今後は有効性や対費用効果が検討されるようです。)
プレベナー13を既に接種している方は除外されませんが、過去に1回でもニューモバックスNPを接種したことのある方は対象から除外されます。

小児(6歳未満まで)への肺炎球菌ワクチン定期接種は、それまでのプレベナー7から2013年11月1日にプレベナー13に変更されています。
65歳以上の方で、肺炎球菌ワクチンを希望される場合、該当年齢時にニューモバックスNPの定期接種を受けられるか、任意接種でのプレベナー13あるいはニューモバックスNPを接種するかを担当医とよく相談されることをお勧めします。

平成南町クリニック 玉田

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2014年7月19日 (土)

最近参加した総合診療・救急医療の教育講演会

 

3月22日 岡山衛生会館 「総合診療のパールズ」 徳田安春先生(筑波大学大学院人間総合科学研究科 臨床医学系 水戸地域医療教育センター 教授) NHKの総合診療医 Dr-G によく登場されています。
「Dr 徳田のバイタルサイン講座」の著者に直接会うことができました。パール(ズ)とは、経験に基づく医学的な真理を短い簡単な文で示したものです。第1部のバイタルサインの見方では、「洞性頻脈の最高値は、220-年齢」を教わりました。85歳の人の拍動数が140だった場合、220-85=135なので洞性頻脈と考えてはいけないという事です。頸部での静脈拍動では、中心静脈圧の評価方法や完全房室ブロックなどの時に見られるキャノン(大砲)波の解説がありました。第2部は、主に抗菌薬の思わぬ副作用についてでした。ST合剤による高K血症、キノロン剤による腱断裂、セフトリアキソンによる胆嚢炎など、よく言われているけれども忘れがちな現象の解説がありました。参加者への質問形式であり、何問かを答えることができました。


 6月21日 倉敷市民会館 「診断推論をいかに教えいかに学ぶか」 生坂政臣先生 (千葉大学医学部附属病院総合診療部教授) NHKの総合診療医 Dr-G によく登場されています。
「見逃し症例から学ぶ日常診療のピットフォール」や「めざせ 外来診療の達人」の著者に直接会うことができました。「総合診療医 Dr-G」に似た形式で行うという触れこみのあった講演会でしたが、「回答者役」で最前列に並ばれたのは医師会の先生お二人と医学生の二人でした。
 睡眠中の強い頭痛が主訴の15歳女性では、30分間で頭痛は軽快するが、頭痛の最中はのた打ち回り、血圧上昇と過換気、冷汗などを伴っていた、という状況でした。パニック障害、片頭痛などが鑑別に上がりましたが、これらには合わない点がありさて原因は?という問題でした。私は自信ないため回答者席には居ませんでしたが、褐色細胞腫を言い当てることができました。しかし、片頭痛ではあり得ないことを「30分で軽快すること」としたのは誤りでした。正解は、「片頭痛は短時間で軽快する病型はあるが、のた打ち回ることはなく、ふとんを被ってでもじっとしていることが殆ど」ということでした。

 記憶に残るもう1例は、最初の主訴が息苦しさと下腿浮腫という60歳代男性です。検査にて中等量の心嚢水と少量の腹水が判明し、利尿薬のみの投与で改善。しかしその後に大量の腹水貯留をきたすようになり月1回の腹水除去が必要になったという症例です。腹水検査で異常が無く、原因が分からないまま経過していたのですが、吸気時に頸静脈の拍動がより明瞭になる「クスマウル徴候」があり、収縮性心膜炎と診断されました。心嚢水が自然経過で消失しているので、ウィルス性か結核菌性の心膜炎が考えられ、この症例は結核だったとのことです。状態の変化を一つの原因でまず考える「オッカムの剃刀」が鍵でした。他にも参考になる事例があり、あたかも「Dr-G」を見ているようでした。
 収縮性心膜炎については、「ティアニー先生のベストパール」という本に、No12(P13) 「この外科的に治療しうる疾患は新たに発生した腹水の原因として最も誤診される」というパールがありました。(未診断の)腹水患者さんを診たら収縮性心膜炎をまず鑑別し、心臓超音波検査を行いなさいとなっています。頸部の静脈拍動を丁寧に観察する必要があります。

 7月15日 倉敷国際ホテル 「ERで診断に苦慮した症例」 池上徹則先生 (倉敷中央病院 救命救急センター救急科 主任部長)
 倉敷中央病院の非常に多数のER患者さんで、より注意して診なければならないのは、救急車で搬送される方ではなく、「歩いてERを受診される方」という教訓の話でした。診断が困難であったのは、非典型的な症状を訴えている解離性大動脈瘤、クモ膜下出血、感染性心膜炎などということでした。喉の違和感や一過性の視力低下で発症した解離性胸部動脈瘤、一旦軽快するクモ膜下出血の頭痛など身の引き締まるような症例の提示がありました。腹痛で複数回受診するもその都度しばらくすると機嫌の治る1歳未満児の精巣軸捻転の話は、医師会の救急センター当番で小児診察もしている私にとっては非常に教訓的でした。血圧の左右差上下差、頭痛の問診を正確に行うこと、腹痛の原因は腹部にのみあるのではないという当たり前のことを忘れないで、訴えの原因は何なのかと常に自問しながら診察する大切さを学びました。


 クリニックで診断に苦慮した場合にカンファレンスを行いたい事が多々ありますが、クリニックではその場はないので個人的に他の先生方に相談することになります。日常的には自分自身の頭の中で教科書的な鑑別診断を挙げ、「一人カンファレンス」をしています。そのため慣れない症状ですと、どうしても結論を出すのが遅くなりご迷惑をかけることがあります。「どうしてこの患者さんはこのような症状の訴えをされるのか。一つの原因で説明するにはどのような病態なのだろうか。」と毎日悩みながら診療しております。
 
 ※ NHKの「総合診療医 Dr-G」を初回放送分から全て録画し、新しいものはクリニックで見ていただけるようにしています。以前の放映分でしたらDVDを貸出しすることもできます。また、「きょうの健康」、「ためしてガッテン」の医療分野のもの、「チョイス@病気になった時」、「鳥越俊太郎 医療の現場」も全放映分のDVDがあります。

平成南町クリニック 玉田

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2014年4月19日 (土)

糖質制限

 

Photo 米国ニューヨークメモリアルスローンケータリング癌センター センター長兼最高経営責任者のCraig Thompson博士の発表によると、糖質を多く食べると癌のリスクを著しく高めるけれど、脂質を多く食べても癌のリスクは増えないとのことです。蛋白質はその中間のようです。
 経験的に糖尿病の方の発癌率が高いと言われていますが、糖質過剰が発癌に結び付くものと思われます。糖質過剰は肥満の最大の原因ですので、肥満の方も発癌に注意が必要と思われます。
 クリニックでは、糖質制限を安全に行うような指導も行っています。


平成南町クリニック 玉田

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2014年3月20日 (木)

MPS 筋筋膜性疼痛症候群

クリニックに来られる患者さんの主訴以外の症状で多いのは、めまいふらつき・不眠・便秘・浮腫・頭痛などですが、足腰や肩腕の慢性的な痛みの方も多くおられます。

頸椎症や脊椎管狭窄症などを考え、整形外科の先生方に診ていただくことが多いのですが、筋筋膜性疼痛症候群の場合もあるのではと思うようになりました。
この疾患へはトリガーポイント注射が有効とされています。Syringe_004l

私自身はこれまでこの局所麻酔薬注射をしたことがなく、患者さんからその希望がありましても専門的にしていただきましょうとお断りしていました。しかし、病院や整形外科医院へ繰り返し通院することが困難な方の受診も多くなりました。

今後、原理や実施方法を勉強・研修して、安全に効果的にトリガーポイント注射がクリニックで行えるようにして行きたいと考えています。
                                        

平成南町クリニック  玉田

Minamibar

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