少し前の話になりますが、長いようで短かったサッカーW杯もイタリアの
優勝で幕を下ろしました。決勝戦が行なわれてからまだ3週間もたたないのに、随分前のような気がします。さて、わが日本代表は0勝2敗1引き分け、勝ち点1という残念な結果に終わり、代表監督はジーコ元監督からオシム新監督に引き継がれました。
オシム新監督は1990年W杯の成績やJリーグジェフ千葉での指導力が高く評価されており、今後の日本代表監督としての活躍が期待されます。オシム監督がジェフ千葉でとった戦術は、全員が息を合わせてバランスよく、規律正しく動くものです。これは、まじめな日本人の性格にあった戦術と言われています。実際、就任当時日本代表など突出した選手がいなかったジェフ千葉を、瞬く間に優勝争いができるチームに変貌させました。
その一方で、選手に自由を与えたジーコ氏の戦術はあた
かも過去の遺物で日本人にはあわないといった風潮さえあります。それではジーコ氏が指揮を取った4年間は無駄に終わってしまうのでしょうか。ジーコ氏の前の監督だったトルシエ氏は02年日韓W杯で日本をベスト16まで導きましたが、その指導法は戦術に選手を当てはめる方法で、選手個人の考えはあまり反映されない決まり事の多いサッカーでした。02年日韓W杯の反省点のひとつとして、個人の判断能力不足が取りざたされまし
た。刻一刻と状況がかわる試合の中で、選手自身が状況判断できなかったのです。これは、言われた事はそつなくこなすが自らは行動を起こさないという日本人の国民性も関係しているかもしれません。ジーコ氏はそれを承知であえて細かい戦術指示を一切せず選手自身が考えるサッカー、つまりトルシエ氏とは正反対のサッカーを目指しました。ジーコ氏は、規律でしばられたサッカーではこれ以上の発展はできないと判断したのです。選手は自主性をもってサッカーに取り組み、アウェーの中国でアジアカップ優勝をもぎ取ったり、終了間際に決勝点を入れるなど強いメンタリティーも発揮しました。
このように、監督交代は前任者ができなかった事を新監督にゆだね、結果を見てまた次の新監督に替わるというように進められます。ここで重要なのは、たとえ監督がかわったからといってそれまでのチームが全く別のチームになってしまうのではなく、以前にできた土台に積み重ねをしていくという事です。ジーコ氏も、トルシエ氏が築いた規律がベースにあったからこそさらに自主性を植え付けようとしたのです。現時点では新しい日本代表のメンバーは発表されていませんが、オシム氏もジーコジャパンと全く別のメンバーにするのではなく、既存のメンバーをベースにする意向のようです。
ジーコ氏は残念ながらW杯ではよい成績をあげる事はできませんでした。しかし、だからこそ今の日本代表の課題が見えた部分もあり、僕自身はジーコ氏が選手の自主性にまかせたサッカーにトライした意義は大きいと思います。日本サッカー協会は、まだ日本選手が個人の自主性や技術では世界の強豪チームとは戦えないと判断したようです。そこで、再び規律を重視するオシム氏が新監督となりました。
結果だけ見れば今回のW杯の成績は失敗といえるでしょう。しかし、それを失敗で
終わらせては次がありません。物事は全てが順調にすすんで成功を収める事は数多くありません。むしろ失敗し、それを反省し、一つ一つを少しずつ積み重ねていく事が本当の成功への近道と思います。今回のW杯は残念な結果に終わりましたが、だからこそ次回のW杯に期待しましょう。
医師 T.T
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