2012年5月19日 (土)

熱中症の季節ですが凍傷にも注意?!

Photo パソコンなどの塵掃除用のエアダスターを誤って使用し、内容液(LPG?)が両手にかかり凍傷となって、平成南町クリニックでの湿潤療法を希望し受診された方がありました。水疱膜を除去し、ぬるま湯で洗浄後にワセリンを塗布したプラスモイスト被覆による湿潤療法を開始しました。熱傷、凍傷、褥瘡、挫傷などの原因を問わず、「(傷を消毒しない・スルファジアジン銀クリームや界面活性製剤などを使用しない)湿潤療法」は合理的な治療法です。http://www.wound-treatment.jp/ 皮膚全層欠損となる3度熱傷もほとんどの場合、時間はかかりますが線維芽細胞成長因子製剤や皮膚移植などに頼らなくても、より自然な状態で治っていきます。直接皮膚縫合が困難な創傷も、開放のままでも骨が露出していても感染を起こすことは稀で、上皮再生によって治癒することが期待できます。
 さて、エアダスターに限らずポイントクーラーやエアゾール式消炎鎮痛薬でも、それらに含まれる揮発成分の気化熱によって凍傷をおこす危険性があります。逆さまにしたり傾けたりして噴射すると、ガスではなく液体成分が直接噴出され過冷却となるのは容易に想像できます。製品の説明どおりに注意して使用しましょう。
 5月も下旬になり熱中症の起こりやすい季節になりました。熱中症予防のために、環境温度を湿球黒球温度計による計算温度(乾湿温度計と黒布で覆った温度計の3つの温度で計算)で区分して注意すべきとされています。(日本気象学会が提唱しています。気温と相対湿度から評価できる一覧表も示されています。
http://www.kyoto-kem.com/ja/heat/pdf/nettyushou080114.pdf )
日本医師会雑誌5月号は熱中症の特集が組まれています。治療が遅れないように熱中症の区分をⅠ度、Ⅱ度、Ⅲ度としⅠ度以外は速やかに受診する必要性を強調してあります。Ⅰ度は以前の区分では熱失神・熱けいれんに相当します。くらくらしたり、こむら返りが出たりするけれども独歩可能であり腋窩体温が38度未満で、口から飲水できる状況と考えて下さい。涼しい場所で風に当たりながら体を冷やし、食塩を含む水分を飲んで回復を待ちます。もちろん大事をとって受診されることは構わないと思います。Ⅰ度以外は受診してⅡ度かⅢ度を区別し治療していきます。尿が赤くなるミオグロビン尿は横紋筋融解を示しますが、Ⅰ度熱中症でも起こりえるようです。しかし、腎機能障害がないかどうか確認が必要です。
 最後にお知らせです。鬼手回春No.238号で紹介されていました痛み止めテープの「ノルスパンテープ」の処方は平成南町クリニックでもできるように登録いたしました。(処方医 玉田) 必要のある方はご相談下さい。
(写真は、平成南町クリニックがありますローズガーデン倉敷で美しく咲いているバラです。)

                                         

平成南町クリニック 玉田  

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2012年4月20日 (金)

訪問診療

Photo 4月から全仁会としての訪問診療を担当しています。クリニック外来休診の木曜日午後に、訪問します。クリニックでの診療と基本的には異なりませんが、在宅で過ごしておられる方々ですので、画像検査や緊急検査に頼ることが難しく、急な状態の変化時には、症状と身体所見のみで判断しなければなりません。バイタルサインの評価と理学所見で判断するという診察の基本が主となります。大事にしたいのは普段からの、皮膚・爪の状況、口腔粘膜や舌の状態、胸部呼吸音・心音、腹部超雑音・触診、関節・筋肉・皮下脂肪の状況などですが、まだ開始したばかりですので、把握しきれていません。なるべく早く、「いつもの状態」を確認できるようにしたいと思っています。

 訪問診療は医師一人でできるものではありません。診療介助の看護師や、訪問看護のスタッフの方々、訪問リハビリ・訪問入浴などの訪問サービスを提供されている方々、ケースワーカーの方々、それにもまして御家族の毎日の営みがあってこそ、訪問診療が成り立ちます。また、急変時には倉敷平成病院の先生方やスタッフの皆様にお願いすることになります。

 御家族やご本人の意向をよく聞かせていただき、医学的助言をしながら、居宅医療を受けていて良かったと思っていただけるよう、努力していきたいと思います。

 訪問診療に限りませんが、療養上のことや日常生活のことで、「ここが何とかならないか。」「この具合が良くない。」など工夫すれば改善できるかもしれない事柄がありましたら、医学的なことでなくてもご相談下さい。

先日は、硬性コルセットの接触部が硬くて痛いと悩んでおられる方に、やや固めのスポンジ様クッション材(商品名「ホワイト・キューオン」という吸音材)を棘突起の突出に合わせて凹ませて貼り付けたところ、「装着時の痛みが軽くなって具合が良い。」と喜んでいただけました。

  全くの私事ですが、娘のために小さめのアンティーク風勉強机を作りました。購入した木材を切断・組立て、ウォールナット色に塗装したのですが、シンプルな机になり大層喜んでくれました。(写真)

                                              平成南町クリニック  玉田

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2012年3月21日 (水)

糖質制限食

思うところあり、2月中旬から「プチ糖質制限食」を始めました。内容は、「米飯、パン、麺類を極力少なくする。菓子類はこれまでより減らす。」というものです。全摂取カロリーの糖質における割合が何%になっているかは計算していません。

 1ヶ月で体重1kg減、腹囲3cm減、首まわり1cm弱減、です。このままいけば、一年後には標準体重になれるはず・・・。糖質を減らす代わりに「豆腐」を食べていますが、空腹感はあまり有りません。また、米飯を食べないと「おかず」の塩味がこれまで通りだと濃すぎるようになり、おそらく減塩食にもなっていると思われます。食後の「胸やけ」がこれまでは時々ありましたが、最近は感じなくなりました。蛋白質の摂取量が増えているはずですが、「慢性腎臓病」にはなっていませんので上記の食事を続けています。(糖尿病もありません。真似して飛びつかないで下さい。)
  2012年1月の日本病態栄養学会において、(糖尿病患者に対して)『低炭水化物食は「是」か「非」か?』 の討論が行われ、「低炭水化物食」は少なくとも短期中期的には「低カロリー食」よりも優れているが、長期的効果は低カロリー食と同様に、まだ未定 との評価だったとのことです。010

 アメリカ糖尿病学会(ADA)は、2008年に糖質制限食の有効性を、減量効果のみについて公式にカロリー制限食と同等に認めていました。本年になり糖尿病治療のための食事療法に関する系統的レビューがなされ、糖質制限食が糖尿病の食事療法のひとつとして容認される方向のようです。
北里研究所病院 糖尿病センター長 山田悟 医師 の解説によれば、「糖質制限食」は糖尿病治療として容認されたと考えるが、その定義が不統一、ケトン産生をおこす糖質下限量以下も「糖質制限食」に含めるかどうか、糖質制限の結果おこるであろう脂質・蛋白質増量の影響が検証できていない、などの問題点もあるようです。同医師の考える「糖質制限食」は、1日の糖質量130g以下で,なおかつ1食の糖質量20~40gとのことですので、糖質カロリー520キロカロリー以下(1600キロカロリーの32.5%以下)となります。

現在の糖尿病食の標準は中糖質食(エネルギー比率50~60%)なので、エネルギー比率40%以下の「低糖質食」が長期的に安全だと検証できれば、食後高血糖のコントロールが容易になると思われます。(個人的な報告では、HbA1c値もかなりの改善が得られているようです。) しかし、高蛋白食や高脂質食になってしまうリスクがあるので、腎機能障害や脂質代謝異常のある場合には、「炭水化物さえ減らせば、肉・魚・卵・大豆など好きなだけ食べても大丈夫。」という訳ではなさそうです。

 極端に走るのは常に戒めなければなりませんが、それまでの常識が変わることもあるものです。

平成南町クリニック  院長 玉田二郎

Minamibar

※右上のイラストはこちらから使用しました

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2012年2月20日 (月)

私のお気に入り

Image001  先日NHKで「ここまで来た うつ病治療」を特集していました。薬剤治療が奏効しない人への反復性経頭磁気刺激療法(TMS)が紹介されていました。また、問診だけによらないで、脳血流の画像診断装置・光トポグラフィー(NIRS)による鑑別が、正確な診断のために必要だと指摘されていました。軽症で発症初期のうつ病の人に対しては、その効果が再認識されている「認知行動療法」が有効であり、また、「扁桃体」活動を可視化して自己訓練を行うことでうつ病の予防ができる可能性のあることが示唆されていました。
 同じ事実をネガティブに考えずに前向きに考える、楽しかったことを思い浮かべる、自分を幸せにするイメージを膨らませたりすることで、「うつ病」を克服することの大切さを説いていました。
 それを見て、50年近く前に観た映画「サウンド オブ ミュージック」の中の「私のお気に入り」という歌を思い出しました。以下に、拙稚ながらも我流訳を書きます。

Raindrops on roses and whiskers on kittens    バラについた雨粒、子猫のヒゲ
Bright copper kettles and warm woolen mittens  銅のピカピカヤカン ウールの暖かミトン
Brown paper packages tied up with strings     紐で結んだ茶色の紙箱
These are a few of my favorite things         お気に入りの一つ

Cream colored ponies and crisp apple streudels    クリーム色のポニー パリパリの林檎タルト
Doorbells and sleigh bells and schnitzel with noodles ドアベルやそりのベル、パスタ付きカツレツ
Wild geese that fly with the moon on their wings    月の光を浴びて飛ぶ雁
These are a few of my favorite things            お気に入りの一つ

Girls in white dresses with blue satin sashes     白いドレスに青いサテン帯をした娘たち
Snowflakes that stay on my nose and eyelashes  まつ毛や鼻に舞い降りた雪
Silver white winters that melt into springs       段々と春に近づく白銀の冬
These are a few of my favorite things          お気に入りの一つ

When the dog bites                     犬が噛んだり
When the bee stings                    蜂が刺したり
When I'm feeling sad                    悲しくなったら
I simply remember my favorite things          お気に入りを思い出すだけで
And then I don't feel so bad                いやな気分はすっかり消える

 失敗したり、自信をなくしたりして憂欝な気分になり、元気が出なくてやる気がなくなって、どうでもよくなる。そんなことは誰にでもあるでしょう。家族や親友・パートナーと話したり悩みを打ち明けたりして立ち直れることもあります。しかし、例えそのような人が周りにいなかった時も、「私のお気に入り」を忘れずに思い出しましょう。
  I simply remember my favorite things  And then I don't feel so bad  です。

(写真は、美観地区中橋 凍った倉敷川 です。)

平成南町クリニック 玉田

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2012年1月20日 (金)

小さな驚き

 Photo 写真は、2年前に頂いた原木から昨年12月にやっと出てきた椎茸です。あきらめかけていたので大変驚き、また嬉しく思いました。小鳥につつかれた跡が出来てきたため、より大きくなるのを待つのを止め、半分は焼いて、半分は鍋物にして食べてみました。歯ごたえが十分あり(硬い!?)ましたが味と香りが濃厚で、買い求めた椎茸よりもおいしく感じました。

 継続は力なり 待てば海路の日和あり 石の上にも三年 といった心境のこの頃です。

つらいことの続く世の中ですが、何気ない日常の小さな驚きにこそ幸せがあるのではないでしょうか。解決方法がないと思っている苦しみや辛さでも、もしかすると解決できるかもしれません。また、どうしても解決できなくてもそれを理解してくれる人がいれば、救われます。

そのような場面に立ち会っていると信じて毎日の診療を行っています。難解なので通読できずにいますが、医学書院の「ナラティブ・メディスン(副題 物語能力が医療を変える)」を少しずつ読んでいます。患者さんそれぞれが持っている「物語」を理解し共有する-物語能力-ことから医療が始まるという趣旨のようです。

平成南町クリニック 玉田

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2011年12月20日 (火)

クリニック開院1年を経て

本年1月5日に、ローズガーデン倉敷1Fにおいて「平成南町クリニック」が開院して、ほぼ111220 1年が経過しました。クリニック院長として従事いたしましたが、診療上もシステム管理上も特に問題なく過ごすことができ、大変ありがたく感じております。来年1月4日からは、診療日・診療時間の拡大をいたします。(火曜日午前中、第2・4土曜日午前中も診療いたします。また診療開始時刻を、午前は8時30分から、午後は13時30分からとします。) これに従い、私の倉敷平成病院での診療は終了いたしますが、全仁会での診療に専念することには変わりなく、これからも宜しくお願いいたします。
 この1年間は、これまでにない経験をいたしました。倉敷市休日夜間急患センターへの出務(夜間および休日)、休日在宅当番医診療(10月23日)です。いずれも内科系診療所の当番義務ですが、市民の医療へ全仁会の一員として些かでも貢献できたのではと考えております。また、介護認定審査委員会研修へ参加いたしました。今後、 認定審査委員会に出務の予定としていますが、介護認定の厳格さと責務の重大さを痛感しています。
 クリニック診療では、症状・病歴(問診)と身体所見(バイタルサイン・視診・触診・聴診・打診)で疾患を絞り込んでいく大切さを実感しております。無症状の検査異常値もありますので、検査も重要ですが、検査項目は疾患を確定・除外するための必要最小限にしたいものです。
これまでも留意していたことですが、今後も以下の言葉をよく噛みしめて診療に従事していく所存です。

(免疫不全時の感染症治療において) 「結果オーライ」を繰り返す施設は大きな視野、長期的な視野で見ると経験をいくら積んでも診療レベルが上がっていかない。」 ( 「免疫不全患者の呼吸器感染症」第1章1 免疫不全者における呼吸器感染症診療の原則 青木 眞 から抜粋) 感染症に限らず、どのような内容の診療にも当てはまることだと思います。
         
平成南町クリニック 玉田

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2011年11月19日 (土)

耐性マイコプラズマ

従来の特効薬が効かないマイコプラズマ感染が広がっています。
2003年、2006年に次いで、本年2011年は、マイコプラズマ肺炎の流行年となっているとのことです。

マイコプラズマ感染の原因微生物は、「肺炎マイコプラズマ」という細胞壁を持たない細菌に分類される微生物で、肺炎のみでなく上気道炎・気管支炎の原因にもなります。
従来、マイコプラズマにはマクロライド系抗生物質が有効でしたが、10年位前からそれらに対する「耐性菌」が増加してきています。近年、耐性菌が急増し、本年は小児においては、耐性菌の割合が89.5%であり、治療としてマクロライド系抗生物質(商品名 クラリス・クラリシッド、ジスロマックなど)は選択できない状況です。成人は小児程ではないと言われますが、小児から感染することも多いので、やはり耐性と考えておいた方が良いようです。

マクロライド耐性のマイコプラズマにも、テトラサイクリン系の抗生物質(商品名 ミノマイシン、ビブラマイシン)は有効なのですが、適応菌種にはなっていません。また、8歳未満の小さい子供さんや妊娠中期以降の妊婦さんへは、原則的には使用できません。(小児や胎児の歯の着色やエナメル質形成不全の可能性があります。) ニューキノロン薬も効果がありますが、肺炎でなければ、耐性菌を増やさないために、できれば他の感染症治療のために大事に「とっておき」にしたい薬剤です。(商品名 アベロックス、ジェニナック。 クラビットも有効ですが適応菌種にはなっていません。)
細胞壁がないので、フロモックスやメイアクトといったセフェム系あるいはパセトシン・ユナシンなどのペニシリン系の抗生物質は、もともと無効です。
 Photo 最初は、発熱・上気道炎症状・咳があるので、一般的な風邪やインフルエンザと区別しにくいですが、これらは通常1週間位で咳が治まるのに比べ、マイコプラズマ感染では、咳が強くなかなか治まらないのが特徴です。有効な抗菌薬を使用すれば、咳の改善が少し早くなりますが、それでも普通は咳が3週間以上長引きます。咳が続くという特徴からは、百日咳も同様ですが、こちらは初期の発熱や上気道炎症状がないか軽度です。
検査診断では、血液の「肺炎マイコプラズマ抗体」や「百日咳菌毒素抗体」の値で行います。ただし、発症すぐにはこれらの抗体価は増えておらず、2週間以上の間をあけて2回測定して4倍以上の増加で判断します。1回のみの検査でも、非常に高い値だと検査診断が可能です。
  インフルエンザが流行してきますと、症状での診断は、特に発症初期には困難となりそうです。生活圏の流行状況や症状の経過、積極的な検査で区別することになります。時には、合併と考えて複合治療を余儀なくされるかもしれません。

                                          

平成南町クリニック   玉田

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2011年10月20日 (木)

本音で語る

10月14日に岡山コンベンションセンターで、第16回 岡山呼吸器感染症研究会があり参加してきました。
特別講演が2演題あり、1つは藤本卓司先生(市立堺病院総合内科部長)の「グラム染色から見た感染症診療」でした。グラム染色は、肺炎や尿路感染などで、痰や尿を迅速染色して、原因になっている細菌がどんな種類のものかを推定し、必要充分な抗菌薬で治療を開始するのに役立てます。また治療がうまく行っているかどうかの判定にも役立ちます。(倉敷平成病院・平成南町クリニックでは外注検査で行っています。)薬剤耐性菌を増やさないためには、不必要な菌まで狙う抗菌薬は使わないのが原則です。起因菌の固有名詞を想起せずに治療を開始すると、不必要な「広域抗菌薬」を使いがちです。講演は、具体的なテクニックを交えての実践的な内用でした。

もう1演題は、サクラ精機(株)学術顧問の青木 眞先生(ブログ「感染症診療の原則」を主催されている、著書「レジデントのための感染症診療マニュアル」などでとても有名な感染症医です。)による「抗菌薬適正使用~耐性菌Kansen 問題とその周辺~」でした。
耐性菌で特に深刻なのは、大腸菌・緑膿菌、セラチア菌、アシネトバクターなどの多剤耐性グラム陰性桿菌です。今の日本で使用できる抗菌薬では治療できない耐性菌が検出されています。検出されることと起因菌であることとは分けて考える必要がありますが、これらの耐性菌が蔓延するであろうことは充分予測できます。幸いなことに倉敷平成病院では、全薬剤耐性菌は極めて稀であり、かつ起因菌にはなっていない状況で、院内感染事例も生じていません。しかしそうならないリスクは常に有り、耐性菌を減らすには、医師全員が耐性菌のことを意識して処方する必要があります。

 講演後に次の2点を質問いたしました。「亀田総合病院マニュアル」では、純粋な誤嚥性肺炎では、24時間経過を見てから抗菌薬投与を決定するとなっているけれども、経験に裏打ちされたものかどうか? 
日本呼吸器学会ガイドラインに、風邪症候群と考えられても抗菌薬投与を考慮する条件の1つに「65歳以上」があるけれども、その根拠は何なのか?
 この質問にご自身の経験と考え方で答えていただき、「ガイドラインというものは、特定の患者さんに最良医療を提供するというよりは、医療過誤にならないようにボトムアップを図るもの」という考え方を示されました。
 懇親会では、青木先生の色々な「本音」を聞かせていただき大変楽しい1時間を過ごしました。(会場の駐車場が閉まるということで終了になってしまいました。)

 藤本先生は、卒業年度からは私と同じ大学の後輩の先生ですが、感染症診療では大先輩であり、市立堺病院の耐性菌状況などについて教えていただきました。具体的にではありませんが、倉敷平成病院での講演をお願いしたところ、前向きに考えて頂けそうでした。

 著書や雑誌投稿記事では分からない「本音」を直接聞いて学べる機会は、本当に貴重な経験です。

平成南町クリニック 院長 玉田二郎

Minamibar

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2011年9月20日 (火)

臨床診療の基本

 知らなかった病名や経験したことのない疾患については、その都度教科書や報告文献などに目を通して知識を整理します。しかし、「知っている」と思い込んでいる事柄については、実はあやふやな知識のままのことがあるものです。最近読んだ本に、「誰も教えて1109201_3 くれなかった 血算の読み方・考え方」(医学書院 聖路加国際病院 血液内科部長 岡田 定 著)があります。血算とは、一般的な血液検査で、赤血球・網赤血球・白血球・血小板を調べるものです。血算の結果をみて、貧血の有無、感染症を思わせる白血球増加の有無、血小板数減少などを判断しますが、それぞれの結果の組み合わせや症状、身体所見との総合評価をすることによって、見過ごしているかもしれない病状を推測できることを改めて学び直しました。自動測定機能を駆使すると通常の結果以外に、様々な「指標」を算出でき、病態をより明らかにすることが可能になって来ていることを知りました。
 1109202 「腎臓病診療に自信がつく本」(カイ書林 聖路加国際病院 腎臓内科部長 小松康宏 著)では、ナトリウム・カリウムの電解質異常について病態生理や薬剤との関連で解説してあり、「電解質異常の原因」に応じた対処法を再学習しています。低ナトリウム血症はよく見られる異常ですが、軽度でも転倒のリスクが増え、精神状態の変化や場合によっては命につながる場合があります。「食塩(生理食塩水)を補充すればよい。」という単純なことではありません。降圧薬との関連もみられます。低カリウム血症も時々出会う電解質異常です。その原因を放置したままでカリウム補充を行うことは時に危険な状況を引き起こすこともあります。
どのような検査結果や身体所見も、「正常値であることがおかしい」場合もあり、結果・所見は組み合わせで解釈すべきであり、そのためには病態を知っていなければならないと切実に感じています。何科を標榜しようとも、症状だけでなく検査結果や身体所見も常に「総合診療」を行う必要があります。

平成南町クリニック  玉田

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2011年7月21日 (木)

便利な危険物

今年は、7月21日が「一の丑」の日、8月2日が「二の丑」の日とのことです。Unagi
土用の丑の日と言えば、讃岐出身の平賀源内が、1822年頃、鰻屋の売上増加相談に答えて、土用の丑の日に「う」のつくものを食べれば夏負けしないと言われているので、「本日土用の丑の日」と店先に貼るよう勧めたのがきっかけで、広く鰻をこの日に食べるようになったとのことです。
天然鰻には手がでませんが、せめて認可されている水産医薬品(抗菌薬を含む)のみの基準内使用での養殖鰻を食べたいものです。(日本でも鰻養殖に認可されている抗菌薬があります。)

 平賀源内は、秩父山中で石綿を発見し、1764年に職人に頼んで石綿線維で布を作り、中国の故事にならって「火浣布(火で洗える布)」と名付けて商品にしようとしたとされています。
この石綿線維は、20世紀になって様々な工業製品や断熱材などの建材に使われました。しかし、ご存知のように石綿塵肺や肺癌・悪性中皮腫という悪性腫瘍の原因になることがわかりました。
現在は製造・使用が禁止されていますが、禁止前に使用されていた建物の解体や破壊に伴って大気中へ飛散する石綿線維は今も問題になっています。平賀源内に罪はありません。
発見・発明された当初は、便利で重宝な夢のような材料や技術として大いにもてはやされたものは他にも多々あります。カーボンナノチューブと呼ばれる炭素の極細線維が、強度と軽さから夢の新素材として脚光を浴びています。
しかし長繊維のカーボンナノチューブは、石綿長線維と同様に実験的中皮腫を引き起こすことが判明しています。化学的に安定した極細長繊維が、発癌性を持つことはほぼ定説になっています。今の内に対策を採らないと「第2の石綿被害」が生じるでしょう。原子力発電・タバコ・・・・まだまだありそうです。

 身近な所で、回避しようと思えば回避できる「便利な危険物」の一つに、テフロン加工フライパンがあります。
テフロンはデュポン社製品の名称ですが、フッ素樹脂のことです。260度以上でこの樹脂は劣化し始め、350度以上になると分解ガスが空気中に出てきます。これを吸入すると「ポリマーヒューム熱」と呼ばれるインフルエンザや肺炎に似た症状を起こすことが知られています。200度の加熱でも小鳥が死んでしまったケースもあるようです。
人では、直後には咳・のどの痛み・眼の痛みが生じ、数時間たつと発熱・呼吸困難・頻脈・筋肉痛・白血球増加がみられ、場合によっては胸部X線写真で陰影が出現し、さらに肺水腫を来たした報告もあります。空焚きをすると容易に350度以上になるようです。
特にHI調理器では空焚き1~2分で高熱になるので注意が必要です。加工していない鉄製フライパンが最も安全です。フライパン以外のテフロン加工加熱調理器も同じことです。
「空焚きして居眠り」が最も危険な状況です。 

もう一つの身近な例は、食品(特に調理済み食品)の保存用物質です。
食品添加物として認可されている保存剤はその使用表示が義務つけられており、基準内であれば安心して口に入れることができます。
しかし、同じ保存目的で添加される「pH調整剤」は、添加物と見なされないので表示の義務がありません。食品添加物の基準内使用量と同程度に細菌繁殖を抑える「pH調整剤」の使用量のほうが、人体毒性は強かったという報告があります。「食品添加物非使用」と表示してある食品が、そうでないものより安全であると思い込むのは危険です。(危険かどうかは、質よりもその量です。)

  「夢のような」ともてはやされる新発売医薬品も、それでしか治療できない場合はしかたありませんが、従来からある長年の経験・実績のある薬品で治療できる場合は、あまりに早急に手を出さない方が安全です。015
感染症の専門家では、(日本でということではなく全世界的に)新規発売抗菌薬は、どうしてもという場合以外は使用しないという方針の人が多いです。
抗菌薬に限らず、患者さん目線の専門家ほどこの傾向があるように思います。認可されるまでの治験段階の使用人数と発売後の使用人数は比較になりません。
多くの人に使われて初めて判明する副障害があります。他の薬では治療できない場合には、そのリスクを上回る効果が期待できれば積極的に使用するべきですが、そうでなければ慎重に考えたいものです。

 平成南町クリニック  院長  玉田二郎

Minamibar

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