新型インフルエンザワクチンに思う
今季の新型インフルエンザについて様々な情報が科学的な検証なしで飛び交っています。医療従事者であっても私たちのような末端の臨床医にとっては、入手できる情報やその質には限界があります。神戸大学感染治療学分野教授の岩田健太郎氏の個人的ブログに(9月中の記述と思われますが)「新型インフルエンザに対し、医師はどう対峙し、対応すべきか。提案。」と言う長文があります。氏の基本的なスタンスは、不明確なことが多いこの曖昧模糊とした新型インフルエンザについて現在言えることは、誰もが科学的な検証がまだ出来ていないので誰の言うことが正しいとか正しくないとかではなくて、臨床医・患者・一般の人々それぞれの「価値観」を確かめて対応すべきだということのようです。
さて、10月17日の新聞報道に「厚生労働省は、意見交換会で専門家らの合意に
従い国内産ワクチンは13歳以上原則1回接種とすると決定した。」とありました。その根拠として「健康成人96人に通常量(※予定量?)の接種による抗体価を測定したら72人(75%)で国際評価基準まで増加していた。」からとあります。健康な20才以上人の検証結果でなぜ13歳~19歳も1回で良いと結論できるのか、あるいは健康リスクのある優先接種対象者(※感染時の抗体上昇が得られにくいと考えるからこそ優先接種対象者とする?)に有効と結論できるのか、私には判りません。またそもそも抗体価がどれ位あれば感染した時に発症せずに済むかどうかは、その疾患ごとの経験と統計的データから判断できるのであって、今回の未知なる新型インフルエンザに対して「有効な」抗体価がどの程度なのか誰もまだ判らないはずです。この決定によって、新型インフルエンザワクチンは13歳以上1回接種で「有効」というキャッチフレーズが一人歩きしそうな危惧を感じます。75%の人の「何について有効」なのかは「専門家」は提言していません。(※できるはずが無い) さらに報道は、「96人中アナフィラキシー反応が1人、全身中毒疹が1人に出た」としています。2%の人にこのような副作用の出るワクチンなのか!と考え込んでしまいます。先の岩田健太郎教授の同じブログ長文のなかで、新型インフルエンザによる死亡率は日本では今の所0.002%の周辺(同ブログ中データ:日本での従来の季節性インフルエンザでの死亡率は0.09%前後)、アメリカでの検証では0.02%~0.09%と述べています。100万人の新型インフルエンザ感染者のうち20人~900人が死亡してしまうことを回避できるかもしれないワクチン(※その有効性は誰も実証できていませんが死亡回避人数はもっと少ないでしょう)で、100万人のうち1万人がショック症状を呈するともとれます。この1万人のうち手当が遅れて死亡するかもしれない人数はどれ位でしょうか。0.5%として50人です。副作用を重く受け止めるか、実際には検証されていない「有効性」に期待するか、まさに「価値観」に左右されます。(抗体価の上昇と発症防止の関連は多数例の検証で初めて明らかになります。)今後の副作用・有効性についての情報をリアルタイムに公開してほしいものです。
最近気になることに次のことがあります。WHO(世界保健機構)やCDC(米国疾病予防管理センター)の意見は感染症予防対策のバイブルとされているのですが、新型インフルエンザに関する提言に対し、「日本の感染症対策専門家たち」が、WHOについては「彼らの言うことは、薬剤などが不充分な低開発国を視野に入れたものであり、日本には該当しない。」と言ったり、CDCについては「アメリカ軍の一組織であるCDCが述べていることである(※から日本が従う必要はない)。」と言ったりしていることです。何か特別な意図を感じない訳にはいきません。
(※ )は私の個人的見解です。
呼吸器科 医師 玉田





































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