2015年2月20日 (金)

高尿酸血症と低尿酸血症

 

高尿酸血症とは、尿酸値が7.0mg/dLを超える場合を言います。起こりうる症状や疾患は、①尿酸塩の結晶によっておこるものとして、(1)痛風(尿酸 Na 針状結晶による関節炎 70%は足の親指付け根の関節におこります。)、(2)尿路結石(腎臓や尿管に結石)、(3)痛風腎(尿酸そのものや尿酸塩による腎機能障害)、(4)痛風結節(無痛の肉芽腫 関節・耳介・皮下組織)などがあります。②尿酸塩によらずに、血液中の尿酸が多いことによって血管障害がおこり、動脈硬化の原因になりうると言われています。高血圧、虚血性心臓病や脳梗塞のリスクが高くなります。
 高尿酸血症の原因は何でしょうか。①尿酸の排泄低下 これには、腎臓からの排泄低下(肝臓で作られる尿酸700mgのうち7割の500mg)の場合と、腸管からの排泄低下(3割の200mg)があります。腸管からの排泄が低下していることを、直接証明することが現在は不可能なので、この排泄低下の結果おこる高尿酸血症は、次の産生過剰とみなされます。②尿酸の産出過剰 この原因は、一部の遺伝的なプリン代謝酵素異常を除いては判っていません。実際には①のうちの腸管からの排泄低下も含まれています。
高い尿酸値を下げるにはどのような方法があるでしょうか。①尿酸産生を抑制する。そのためには、(1)尿酸の原料となる食品摂取を減らす(プリン体の多い食材を減らす。動物の内臓・魚の干物や乾物など)、(2)体内での産生を減らす(内臓脂肪を減らす。糖質の摂りすぎを避ける。)(3)薬剤で減らす アロプリノール(腎臓排泄型)とフェブキソスタット(胆汁排泄型)があります。②腎臓からの排泄を薬剤で増加させる。(1)尿細管での尿酸の再吸収を抑制する。プロベネシド、ベンズブロマロン (2)腎臓からの尿酸排泄促進 ブコローム(消炎鎮痛薬) ②排泄阻害を避ける。アルコールを摂り過ぎない、激しい運動を避ける(これらは乳酸を増やすので、乳酸排泄が優先され尿酸排泄が抑制される) ③腸管からの排泄増加 これに関してはまだ治療法不明です。

尿酸塩の結晶による障害を減らすためには、①酸性で結晶化するので、尿のpHを下げないようにします。アルカリ性食品(海藻類 干しシイタケ 大豆 ホウレン草 ゴボウ など)の摂取、アルカリ化剤(クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム配合剤)の服用 ②冷やすと結晶化しやすいので足先などを冷やさない ③関節に強い力がかかり続けると痛風発作が起きやすいので、そのような運動を避ける。などがあります。
 低尿酸血症という病気もあります。尿酸値2.0mg/dL以下を言います。原因は、①尿酸産生低下 これは非常に稀な遺伝的疾患です。尿酸になる前の物質の沈着で関節炎が起きたり尿路結石が出来たりします。②腎臓での尿への尿酸排泄亢進 (1)再吸収障害 A尿細管障害による続発性 B遺伝的な原因による特発性 (2)分泌亢進 (3)一過性の低尿酸血症 頸静脈的高カロリー輸液、糖尿病、悪性腫瘍、SIADH、薬剤など。
低尿酸血症の人の合併症として運動後腎不全症候群があります。尿酸には活性酸素を除去する作用があるので、尿酸が少なすぎると活性酸素の害が出てしまうのです。やや激しい運動(無酸素運動)の数時間後に腎臓の血流低下による尿細管障害による急性腎不全が起こることがあります。自覚症状としては運動後の腰背部痛・嘔気嘔吐です。風邪をひいていて無理をしたり解熱鎮痛薬を服用しながら運動したりした後に起こりやすいと言われています。また、普段から尿中の尿酸が多いので尿路結石を生じ易くなります。
また、尿酸値が低いほどアルツハイマー病などの脳の変性疾患にかかり易いという報告もあります。

 この頃、尿酸値がかなり低い高齢者の方が見受けられるので、気になっています。

平成南町クリニック 玉田

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2015年1月20日 (火)

医療機関や介護施設でのインフルエンザ対策

Hatsunetsu_kodomo  日本感染症学会は、2012年に「インフルエンザ病院内感染対策の考え方について(高齢者施設を含めて)」の提言を行っています。

 

院内・施設内でインフルエンザ発症者が出た場合、感染対策の一層の徹底化に加えて、抗インフルエンザ薬(タミフルかリレンザ)の予防投与を早期から積極的に行う事を勧めています。予防投与の対象者は、状況に応じて同一病室内(居室内)、同一フロア、入所者全員などに広げて考えることになっています。また、職員間でインフルエンザ発症が続く場合には職員への予防投与を考慮するよう勧めています。予防投与に伴う懸念や副作用は、予防投与の利益がはるかに大きいと考えられるとしています。実際に予防投与を行うことによる効果があったとする報告も見られます。米国や英国でも同様の対応策を発表しているようです。
重篤な副作用なく二次感染者を減らすことができれば、インフルエンザの重症感染者を減らすことになり大変喜ばしいことです。

 しかしながら、2014年4月の英国医師会雑誌には、2万4千人以上を対象とした最新のコクランレビュー「健康な成人と小児でのインフルエンザ予防と治療のためのノイラミニダーゼ阻害剤(抗インフルエンザ薬タミフルとリレンザについての検討)」において次のように報告しています。

 

予防投薬で精神イベントのリスクが約1%増加した。予防投薬は症候性インフルエンザのリスクを低減しうるが、インフルエンザ感染者がウィルスを運び、他者へ広げることを防ぐという効果は証明されていない。つまり、インフルエンザのヒト間の伝染を予防するためのタミフルの使用は十分な根拠がないと結論しています。

 

この研究結果が事実なら、感染対策上は少なくとも健康な人へのタミフルの予防投薬は無意味であり、感染防御対策を徹底するしかないことになります。即ち、インフルエンザウィルスを貰わない・与えないことに専念する必要があります。具体的には、
 ①環境を触った手で自分の口・鼻を触らない。そのためにマスクをして口・鼻に触れないようにしておく。
 ②院内・施設内で他者に会う時はマスクをして直接飛沫を浴びることを減らす。
 ③自分に症状が無くても自分の口・鼻を触った手で環境を触らない。そのためにマスクをして口・鼻に触れないようにしておく。
 ④マスクをして、自分の咳・くしゃみ・鼻水を直接外部に出さないようにする。

 もし家庭内に発症者がおられたら、同様の感染防御対策が必要と思います。

 当クリニックにおいても上記の考えでマスクをしたまま診察をすることが多いですが、ご了承下さいますようお願い致します。

                       平成南町クリニック 玉田

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2014年12月20日 (土)

高コレステロール血症の治療

 

動脈硬化による心筋梗塞や脳梗塞などの疾患を予防したり再発を防ぐために、コレステロール特にLDLコレステロール値を下げるように生活習慣に注意することが重要ですが、どうしても下がらない時には、スタチン系と呼ばれる薬剤を服用することが一般的です。
どれくらいのLDLコレステロール値まで下げるようにするかは、一人一人の患者さんによって目標値が異なります。(動脈硬化性疾患予防ガイドラインなど)

 しかし、その目標値によってスタチン系薬剤を使用するかしないかは疾患治療としての証拠がないとして、米国心臓病学会と米国心臓病協会の2013年ガイドラインでは、「スタチンを使う利益のある集団」にスタチンを使用することを推奨しています。(当てはまらない人にはスタチンを使用しない)
①アテローム性動脈硬化症の臨床症状のある人(既に発症している人の再発予防)
②甲状腺機能低下症やネフローゼ症候群などの二次性脂質異常症ではない人でLDLコレステロール値が190mg/dL以上の人
③糖尿病患者さんでLDLコレステロール値が70~189mg/dLの40歳から75歳までの人
④アテローム性動脈硬化症発症リスク(年間)が7.5%以上の非糖尿病患者さん(発症リスクは、年齢・人種・コレステロール値・HDLコレステロール値・血圧・降圧薬の有無・糖尿病既往の有無・喫煙の有無の各因子を入力して算出するリスクスコア計算ツールがあります)

 76歳以上の患者さんをどのように考えたらよいのかと悩みますが、動脈硬化性疾患予防ガイドラインでも75歳以上では証拠がないとして「目標値」は定められていません。
 スタチンを使用して治療した方が良いのかどうかを決めるのは、様々な「証拠」があって、実際には患者さんと相談しながら治療医が判断することにはなりますが、様々な証拠があるのでますます悩むばかりです。

平成南町クリニック 玉田

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2014年11月20日 (木)

「風邪」の診断は難しい

寒い時期になると「風邪」をひく人が多くなります。しかし、「風邪」と診断するのは実は大変難しいです。
典型的な「風邪」症状とは、咳・鼻水・咽頭痛がそれぞれほぼ同程度に揃って出ている状況です。熱を伴う事が多いですが熱・咳・鼻水・咽頭痛のどれかが単独ないし際立っている場合には「風邪」と考えない方が安全です。そのような症状が出る疾患には様々なものがあります。(参考書 岸田直樹著 誰も教えてくれなかった「風邪」の診かた 医学書院、山本舜悟編著 かぜ診療マニュアル 日本医事新報社)

 岩田健太郎氏(神戸大学医学部附属病院感染症内科)によれば、「風邪」とはあえて定義すると、「その時点で抗生剤を使わなくても治ると見込めると判断された上気道症状」という事になるようです。(メディカルサイエンス社 臨床クルズス シリーズ2「風邪クルズス」P87) この定義は確実さには欠けますが、治療計画を立てる上では明解です。

 では、どのような時に「抗生剤を使わなくても治る」と見込めるのでしょうか。感染症でなくても「風邪」症状が出ることはありますが、感染症とした場合、ウィルス性9割、細菌性1割と言われています。細菌性であれば菌種の検討が必要ですが、抗生剤が有効なはずです。しかし9割の人には抗生剤は不要な薬となります。

必須でない時に抗生剤を使用しない理由は、
①不必要なアレルギー(薬疹 喘息 アナフィラキシーなど)を起こさせない、
②臓器障害(下痢 肝障害 腎障害 心疾患死亡率を高める「アジスロマイシン」 血糖異常「キノロン薬」など)を防ぐ、
③耐性菌を増加させない、
④偽膜性腸炎の遠因を作らない
 など です。

 こう考えます。風邪症状の原因微生物の吟味は時に困難であるので、軽症か中等症・重症か、免疫状態は良好か不良かで判断する。
 合併症のない非超高齢者あるいは非乳幼児は免疫状態良好と考える。軽症で免疫状態が良好であれば抗生剤が無くても普通に治る。
 重症であっても検査により明らかにウィルス性と判断され、それ以外の可能性が非常に低ければ抗生剤は不要。
 逆に、軽症でも溶連菌感染症のように抗生剤治療が必須の時や経過中に細菌性感染症の所見が出てきた場合は、抗菌薬を使用する。

抗生剤を使用しても最初の判断通りに経過するとは限りません。抗生剤を使用しない場合には経過を知ることがより重要となります。

Minamibar

平成南町クリニック 院長 玉田

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2014年10月20日 (月)

臓器のエネルギー源

 私たちの体のエネルギー源はブドウ糖だけだと思ってはおられませんか? エネルギー源は臓器や細胞ごとに少しずつ異なっています。糖尿病の治療とも関わりがありますので、整理してみましょう。

脳のエネルギー源:ブドウ糖とケトン体。脳細胞のエネルギー源はブドウ糖だけではありません。脳はブドウ糖しか利用できないと思っている方は考えを変えて下さい。脳細胞はケトン体をエネルギー源として利用できます。細胞内のミトコンドリアは脂肪酸からもエネルギーを得ることができますが、脂肪酸は脳血管関門を通ることができないので、脳細胞はブドウ糖とケトン体を利用します。実は、胎児や新生児の血中ケトン体の濃度は高く、脳は主にケトン体を使用しています。糖尿病の合併症にケトアシドーシスがありますのでケトン体を有害物質と思っている人が多いようですが、有害どころか有益なエネルギー源なのです。糖尿病でない妊婦さんでも多くの人は血中ケトン体が高くなっています。インスリン作用が働いている限り、ケトン体が多いだけではケトアシドーシスにはなりません。また、ケトン体をうまく利用できる状況があれば、血糖値がかなり低くても低血糖による意識障害は起こりにくいのです。絶食時や飢餓状態で血糖値が低くなれば脳細胞は積極的にケトン体をエネルギー源にしています。

骨格筋:激しい運動時にはグリコーゲンからのブドウ糖を使用しますが、長時間運動やさほど強くない運動時には脂肪酸をエネルギー源にします。

心筋:重労働時には骨格筋と同じようにグリコーゲンからのブドウ糖を使いますが、通常は脂肪酸、ケトン体、ブドウ糖、ピルビン酸、乳酸などをエネルギー源にします。

肝細胞:ブドウ糖・脂肪酸・アミノ酸を使用しますが、ケトン体はエネルギー源にしません。

網膜:主にはブドウ糖です。

赤血球:赤血球は核を持たないので核の中にあるミトコンドリアもありません。したがって利用できるエネルギー源はブドウ糖だけです。ブドウ糖が必須なのは赤血球だけです。赤血球に必要なブドウ糖は、炭水化物を摂らなくても、肝臓で脂肪やアミノ酸から作りだすことができます。(これを糖新生と言います。肝硬変やインスリン抵抗性を減らすとされる糖尿病薬を服用している人は、糖新生がうまくできません。)

小腸のエネルギー源:アミノ酸の一種のグルタミン酸。

大腸のエネルギー源:短鎖脂肪酸。食物繊維を直接分解する酵素をヒトは持っていませんが、ヒトの腸内細菌は食物繊維を分解して短鎖脂肪酸を作ります。大腸の細胞は、この短鎖脂肪酸をエネルギー源にしているのです。余分な短鎖脂肪酸は血液に入り他の臓器のエネルギー源になります。(もし大量に生成できれば、私たちも草食動物のように草を食べて生きていける!?)

Image001  ピースガーデン倉敷やグランドガーデン南町に入居されている糖尿病や肥満の方々へ、主食の米飯を減らし減量やデータの改善が得られています減量目的でない場合は合併症を悪化させない程度に蛋白質や脂肪の摂取を増やすようにしてもらっています。すなわち適切なカロリーを摂取しつつ、余分な糖質を減らす低糖質食を勧めています。提供できる食事そのものを「低糖質メニュー」にして欲しいのですが、施設では現状のメニューを変えていただけません。

 日本糖質制限医療推進協会の糖質制限通信秋号に糖尿病教育入院に低糖質食を指導実践している病院の紹介がありました。独立行政法人労働者健康福祉機構 鹿島労災病院です。内科医師の呼びかけで管理栄養士の皆さんがメニューを考案されています。この病院の従来の糖尿病食は、糖質エネルギー比57%(高糖質食です)の1440kcal食ですが、低糖質食として、1400kcal食(糖質エネルギー比17% スーパー糖質制限)、1600kcal食(糖質エネルギー比 20% 糖質制限エネルギーアップ用 と 糖質エネルギー比41%の主食テスト用) さらにどうしても米飯がないとだめと言う人用主食テスト用(1700kcal 糖質エネルギー44%)の4種類を用意しています。低糖質食だと確実に血糖値の乱高下が無くなり、退院後も継続することでHbA1cが右肩下がりに改善しているとのことです。糖尿病管理治療に関わる全ての職種の人の意識改革が必要です。

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 私が米飯を減らしましょうとして指導しているのは大凡糖質エネルギー比40%位の「ゆるい糖質制限食」です。それでも効果は十分得られ、特別な問題点は発生していません。現状の提供食は糖質エネルギー比60%になるよう計算したメニューなので、高糖質食なのです。これを基にしてカロリー制限食を指導したり糖尿病治療薬の投与量を決めるのは、どう考えても本末転倒なのです。

写真は、ローズガーデン倉敷(1Fに平成南町クリニック)とグランドガーデン南町の間を行く、阿智神社秋祭り御神幸の皆さん 10月19日

平成南町クリニック 玉田

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2014年7月19日 (土)

最近参加した総合診療・救急医療の教育講演会

 

3月22日 岡山衛生会館 「総合診療のパールズ」 徳田安春先生(筑波大学大学院人間総合科学研究科 臨床医学系 水戸地域医療教育センター 教授) NHKの総合診療医 Dr-G によく登場されています。
「Dr 徳田のバイタルサイン講座」の著者に直接会うことができました。パール(ズ)とは、経験に基づく医学的な真理を短い簡単な文で示したものです。第1部のバイタルサインの見方では、「洞性頻脈の最高値は、220-年齢」を教わりました。85歳の人の拍動数が140だった場合、220-85=135なので洞性頻脈と考えてはいけないという事です。頸部での静脈拍動では、中心静脈圧の評価方法や完全房室ブロックなどの時に見られるキャノン(大砲)波の解説がありました。第2部は、主に抗菌薬の思わぬ副作用についてでした。ST合剤による高K血症、キノロン剤による腱断裂、セフトリアキソンによる胆嚢炎など、よく言われているけれども忘れがちな現象の解説がありました。参加者への質問形式であり、何問かを答えることができました。


 6月21日 倉敷市民会館 「診断推論をいかに教えいかに学ぶか」 生坂政臣先生 (千葉大学医学部附属病院総合診療部教授) NHKの総合診療医 Dr-G によく登場されています。
「見逃し症例から学ぶ日常診療のピットフォール」や「めざせ 外来診療の達人」の著者に直接会うことができました。「総合診療医 Dr-G」に似た形式で行うという触れこみのあった講演会でしたが、「回答者役」で最前列に並ばれたのは医師会の先生お二人と医学生の二人でした。
 睡眠中の強い頭痛が主訴の15歳女性では、30分間で頭痛は軽快するが、頭痛の最中はのた打ち回り、血圧上昇と過換気、冷汗などを伴っていた、という状況でした。パニック障害、片頭痛などが鑑別に上がりましたが、これらには合わない点がありさて原因は?という問題でした。私は自信ないため回答者席には居ませんでしたが、褐色細胞腫を言い当てることができました。しかし、片頭痛ではあり得ないことを「30分で軽快すること」としたのは誤りでした。正解は、「片頭痛は短時間で軽快する病型はあるが、のた打ち回ることはなく、ふとんを被ってでもじっとしていることが殆ど」ということでした。

 記憶に残るもう1例は、最初の主訴が息苦しさと下腿浮腫という60歳代男性です。検査にて中等量の心嚢水と少量の腹水が判明し、利尿薬のみの投与で改善。しかしその後に大量の腹水貯留をきたすようになり月1回の腹水除去が必要になったという症例です。腹水検査で異常が無く、原因が分からないまま経過していたのですが、吸気時に頸静脈の拍動がより明瞭になる「クスマウル徴候」があり、収縮性心膜炎と診断されました。心嚢水が自然経過で消失しているので、ウィルス性か結核菌性の心膜炎が考えられ、この症例は結核だったとのことです。状態の変化を一つの原因でまず考える「オッカムの剃刀」が鍵でした。他にも参考になる事例があり、あたかも「Dr-G」を見ているようでした。
 収縮性心膜炎については、「ティアニー先生のベストパール」という本に、No12(P13) 「この外科的に治療しうる疾患は新たに発生した腹水の原因として最も誤診される」というパールがありました。(未診断の)腹水患者さんを診たら収縮性心膜炎をまず鑑別し、心臓超音波検査を行いなさいとなっています。頸部の静脈拍動を丁寧に観察する必要があります。

 7月15日 倉敷国際ホテル 「ERで診断に苦慮した症例」 池上徹則先生 (倉敷中央病院 救命救急センター救急科 主任部長)
 倉敷中央病院の非常に多数のER患者さんで、より注意して診なければならないのは、救急車で搬送される方ではなく、「歩いてERを受診される方」という教訓の話でした。診断が困難であったのは、非典型的な症状を訴えている解離性大動脈瘤、クモ膜下出血、感染性心膜炎などということでした。喉の違和感や一過性の視力低下で発症した解離性胸部動脈瘤、一旦軽快するクモ膜下出血の頭痛など身の引き締まるような症例の提示がありました。腹痛で複数回受診するもその都度しばらくすると機嫌の治る1歳未満児の精巣軸捻転の話は、医師会の救急センター当番で小児診察もしている私にとっては非常に教訓的でした。血圧の左右差上下差、頭痛の問診を正確に行うこと、腹痛の原因は腹部にのみあるのではないという当たり前のことを忘れないで、訴えの原因は何なのかと常に自問しながら診察する大切さを学びました。


 クリニックで診断に苦慮した場合にカンファレンスを行いたい事が多々ありますが、クリニックではその場はないので個人的に他の先生方に相談することになります。日常的には自分自身の頭の中で教科書的な鑑別診断を挙げ、「一人カンファレンス」をしています。そのため慣れない症状ですと、どうしても結論を出すのが遅くなりご迷惑をかけることがあります。「どうしてこの患者さんはこのような症状の訴えをされるのか。一つの原因で説明するにはどのような病態なのだろうか。」と毎日悩みながら診療しております。
 
 ※ NHKの「総合診療医 Dr-G」を初回放送分から全て録画し、新しいものはクリニックで見ていただけるようにしています。以前の放映分でしたらDVDを貸出しすることもできます。また、「きょうの健康」、「ためしてガッテン」の医療分野のもの、「チョイス@病気になった時」、「鳥越俊太郎 医療の現場」も全放映分のDVDがあります。

平成南町クリニック 玉田

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2014年6月20日 (金)

SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation(勧告)

 

日本糖尿病学会は「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」を発足させ2014年6月13日に表題の勧告を発表しました。重症低血糖、ケトアシドーシス、脳梗塞、全身性皮疹などの重篤な合併症の報告を受けての勧告です。(発売されたSGLT2阻害薬は、スーグラ・デベルザ/アプルウェイ・フォシーガ・ルセフィの5種4剤)
本薬剤は、利用されずに上昇したブドウ糖(高血糖)を腎臓から排出させるのですから、食事の糖質からのブドウ糖を捨てていることになります。1日約70~100gのブドウ糖(米飯200~273g=およそ2膳相当)を捨てることになります。 委員会の勧告では、血糖降下薬(SU剤・速効型インスリン分泌促進薬・インスリン)とSGLT2阻害薬の併用に注意を呼び掛けています。また、インスリン分泌能の低下している場合のケトアシドーシス発現に厳重な注意を促しています。

 SGLT2阻害薬の効能として、血糖降下作用と共に脂肪分解を促進し肥満解消・体重減少効果ありなどと説明されていますが、これはまさに糖質制限食の効果と同じことなのです。SGLT2阻害薬の薬効としてあるものは、そっくりそのまま糖質制限食の効果です。もちろん、血糖降下薬との併用に注意が必要なのは糖質制限食も同じです。但し、糖質制限食では、尿中ブドウ糖が増えることによる尿路感染の危険性増加や利尿作用による脱水による脳梗塞の危険はありません。SGLT2阻害薬を使用しないで糖質制限をすべきです。
 クリニックでは、糖尿病への根本的対処法である糖質制限のために低糖質食材例の表を作成し、糖質制限を行うことに納得された患者さんへ説明しています。血糖コントロールに必要なのはカロリー制限ではなく糖質制限であることは自明の事実です。食事の糖質の大部分を占める主食(米飯・パン・麺類)を減らしたり止めても蛋白・脂肪主体の食材を摂ることでカロリー不足は起こりません。その食材としてどのようなものを選択すればよいかを表にしました。献立の内容をカロリー表示するだけでは血糖コントロールには役立ちません。様々な食材・献立の糖質量表示が望まれます。(食品別糖質量ハンドブック 洋泉社 が便利です。)
 妊娠糖尿病の妊婦さんも、糖質制限食で体重増加が少なくて済み、そして健康な赤ちゃんを出産して母乳も十分出ているという報告が、年間1300分娩数や700分娩数のクリニックから出ています。「糖質摂取+インスリン」という旧来の常識的治療を再考すべき時期になっているようです。
 日本糖尿病学会からの勧告としては2014年3月28日に「ビグアナイド薬の適正使用に関する委員会」から以下のような勧告も出されています。

 全てのビグアナイド薬を原則投与しない:75歳以上の新規患者。
  メトグルコも推奨しない:クレアチニン値 男1.3mg/dL 以上、女1.213mg/dL 以上の場合。
メトグルコ以外は禁忌:肝機能障害・腎機能障害・65歳以上の高齢者。
  メトグルコも慎重投与:肝機能障害 軽度~中等度、65歳以上の高齢者。
糖尿病薬は血糖値の上昇を防ぐため手段であり、低血糖を予防するために糖質を摂るという指導をもし受けておられるなら、それは手段と目的を取り違えた本末転倒の栄養指導です。
 今後、持続血糖測定器の普及で食事内容と血糖変動との関連がより明らかとなり、血糖上昇をおこさない糖質制限の利点が理解されるようになると期待されます。


平成南町クリニック 玉田

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2014年5月20日 (火)

日本糖質制限推進協会 岡山講演会

5月11日(日)に岡山市民会館で日本糖質制限推進協会主催「一般向け岡山講演会」があり参加しました。
同協会は、京都高雄病院理事長が理事長をしている一般社団法人で、主として糖尿病治療に糖質制限を提言している協会です。岡山講演会では、講演① 福山市の瀬尾クリニック(泌尿器科)の瀬尾一史先生(非糖尿病)が自らの糖質制限による減量・検査結果改善の体験談を交え、H24年から糖尿病患者さんへ糖質制限を勧めた結果の報告がありました。基本的には夕食のみ主食を抜く「プチ糖質制限食」ですが、50人の患者さんにおいて、無治療群(薬物療法なし)では治療効果良好、薬物治療群では薬の減量・中止が半数以上でみられたとのことでした。講演②は、同協会理事長の江部康二先生の「糖質制限食の有効性・可能性―食のパラダイムシフトー糖尿病・メタボ・生活習慣・がん・・・~」と題しての基本知識の講演でした。90名の参加者のうち12名が医師・歯科医師で、岡山県内からは私を含めて8人であり、江部医師をして「少なくとも岡山県が、糖質制限OK医師の空白地帯でないことは確かなので安心」と言わしめました。
 平成南町クリニックで、スーパー糖質制限食でうまくコントロールできている糖尿病患者20140520_3 さんが江部医師の講演レジメのコピーを希望されたのでお貸ししましたところ、お礼にコピー2部を頂きました。ご希望の方にはお分け致します。施設入所の糖尿病患者さんにも緩やかな糖質制限をして頂き、データ改善を得ています。しかし施設の方では、提供食の主食を減らした同等のカロリーを自己負担の蛋白質・脂肪で補食していただく必要があります。(主食を減らした食費減を他の食材費には廻してもらえないので)
 アディポネクチン(脂肪細胞から分泌される蛋白で、インスリン感受性亢進・脂肪酸燃焼・動脈硬化抑制・抗炎症作用・心筋肥大抑制・老化防止などの作用あり)は、低脂肪のカロリー制限食では増加せず、糖質制限食で増加したとの論文が2011年に発表されています。

 「糖質制限をしたら、何を食べればよいのか」の質問に答えるため、食品のパンフレットを作成開始しました。身近で実際に購入できるものを中心に、スウィーツを含めて写真入りで作る計画です。

                                           

平成南町クリニック 玉田

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2014年4月19日 (土)

糖質制限

 

Photo 米国ニューヨークメモリアルスローンケータリング癌センター センター長兼最高経営責任者のCraig Thompson博士の発表によると、糖質を多く食べると癌のリスクを著しく高めるけれど、脂質を多く食べても癌のリスクは増えないとのことです。蛋白質はその中間のようです。
 経験的に糖尿病の方の発癌率が高いと言われていますが、糖質過剰が発癌に結び付くものと思われます。糖質過剰は肥満の最大の原因ですので、肥満の方も発癌に注意が必要と思われます。
 クリニックでは、糖質制限を安全に行うような指導も行っています。


平成南町クリニック 玉田

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2014年2月20日 (木)

肌を守る入浴法

Image001 寒い日が続きます。冬の肌荒れに悩む方も多いと思います。クリニックに来られる方や訪問診療で診察している方の中にも皮膚が乾燥して痒くて掻きむしってしまう方や湿疹や痒疹になってしまう方がおられます

原因に一つに入浴時の体洗いの誤りがあります。お湯に浸かっているだけで皮膚の汚れの80%は落ちると言われています。手で優しくなでるだけで殆どの汚れは落ちます石鹸やボディシャンプーと称されるものは界面活性剤ですので皮脂を必要以上に取ってしまい、また皮膚を他の雑菌から守っている常在菌(表皮ブドウ球菌)を除去したり住みにくくしてしまいます。それらは肌が荒れる原因になります。強く擦れば皮膚を傷つけてしまいます。年齢と共に皮脂は減りその影響はより強くなります。

石鹸・シャンプーを使わない入浴は、俳優の福山雅治さんも(私も)行っています。汚いでしょうか?

汚いどころかむしろ美肌効果があります。それでもかさつく所へは、皮膚の乾燥を防ぐ白色ワセリンをよく擦り込むと良いです。決して界面活性剤の入っているクリーム基剤の「保湿剤」や「尿素入り製剤」を使用しないことが肝要です。頭皮については、整髪料などを落とすのにお湯だけでは足りないかもしれません。

Image003  皮膚を清潔にしておきたいという願望は理解できますが、表皮ブドウ球菌とうまく共生することが清潔である条件です。皮脂は彼らの栄養なのです。黄色ブドウ球菌や連鎖球菌などの非常在菌は、いやな臭いの元になったり皮膚感染症の原因になります。白癬菌も表皮ブドウ球菌のいる健常な皮膚は苦手なのです。(お湯だけで足指を洗うようにしてからは、水虫に悩まなくなりました。)

 高齢者の入浴を介助されている方々も、入浴法について考えてみて下さい。必要な部位をアルコール消毒したり石鹸除菌したりすることと、入浴時の体洗いは別の話です。

                  平成南町クリニック  玉田

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