2009年10月20日 (火)

新型インフルエンザワクチンに思う

 今季の新型インフルエンザについて様々な情報が科学的な検証なしで飛び交っています。医療従事者であっても私たちのような末端の臨床医にとっては、入手できる情報やその質には限界があります。神戸大学感染治療学分野教授の岩田健太郎氏の個人的ブログに(9月中の記述と思われますが)「新型インフルエンザに対し、医師はどう対峙し、対応すべきか。提案。」と言う長文があります。氏の基本的なスタンスは、不明確なことが多いこの曖昧模糊とした新型インフルエンザについて現在言えることは、誰もが科学的な検証がまだ出来ていないので誰の言うことが正しいとか正しくないとかではなくて、臨床医・患者・一般の人々それぞれの「価値観」を確かめて対応すべきだということのようです。
 さて、10月17日の新聞報道に「厚生労働省は、意見交換会で専門家らの合意に091020 従い国内産ワクチンは13歳以上原則1回接種とすると決定した。」とありました。その根拠として「健康成人96人に通常量(※予定量?)の接種による抗体価を測定したら72人(75%)で国際評価基準まで増加していた。」からとあります。健康な20才以上人の検証結果でなぜ13歳~19歳も1回で良いと結論できるのか、あるいは健康リスクのある優先接種対象者(※感染時の抗体上昇が得られにくいと考えるからこそ優先接種対象者とする?)に有効と結論できるのか、私には判りません。またそもそも抗体価がどれ位あれば感染した時に発症せずに済むかどうかは、その疾患ごとの経験と統計的データから判断できるのであって、今回の未知なる新型インフルエンザに対して「有効な」抗体価がどの程度なのか誰もまだ判らないはずです。この決定によって、新型インフルエンザワクチンは13歳以上1回接種で「有効」というキャッチフレーズが一人歩きしそうな危惧を感じます。75%の人の「何について有効」なのかは「専門家」は提言していません。(※できるはずが無い) さらに報道は、「96人中アナフィラキシー反応が1人、全身中毒疹が1人に出た」としています。2%の人にこのような副作用の出るワクチンなのか!と考え込んでしまいます。先の岩田健太郎教授の同じブログ長文のなかで、新型インフルエンザによる死亡率は日本では今の所0.002%の周辺(同ブログ中データ:日本での従来の季節性インフルエンザでの死亡率は0.09%前後)、アメリカでの検証では0.02%~0.09%と述べています。100万人の新型インフルエンザ感染者のうち20人~900人が死亡してしまうことを回避できるかもしれないワクチン(※その有効性は誰も実証できていませんが死亡回避人数はもっと少ないでしょう)で、100万人のうち1万人がショック症状を呈するともとれます。この1万人のうち手当が遅れて死亡するかもしれない人数はどれ位でしょうか。0.5%として50人です。副作用を重く受け止めるか、実際には検証されていない「有効性」に期待するか、まさに「価値観」に左右されます。(抗体価の上昇と発症防止の関連は多数例の検証で初めて明らかになります。)今後の副作用・有効性についての情報をリアルタイムに公開してほしいものです。
 最近気になることに次のことがあります。WHO(世界保健機構)やCDC(米国疾病予防管理センター)の意見は感染症予防対策のバイブルとされているのですが、新型インフルエンザに関する提言に対し、「日本の感染症対策専門家たち」が、WHOについては「彼らの言うことは、薬剤などが不充分な低開発国を視野に入れたものであり、日本には該当しない。」と言ったり、CDCについては「アメリカ軍の一組織であるCDCが述べていることである(※から日本が従う必要はない)。」と言ったりしていることです。何か特別な意図を感じない訳にはいきません。
 (※  )は私の個人的見解です。

呼吸器科 医師 玉田

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2009年9月19日 (土)

アンチバイオグラム (分離菌)薬剤感受性率 

 当院における臨床検体分離菌(痰や尿、血液、膿などの培養検査で検出された細菌)の抗菌薬(抗生物質)に対する感受性(効き目)の約3年間のまとめを行い各医師に提示しています。実は、パソコン上ではありますが、データを手作業で集計しており、時間と労力を要する作業です。本来の診療時間以外に行いますので、どうしても時間外となりますが、当院の感染症診療には欠かせない資料ですので、院内感染対策委員会の委員長の責務と考え、休日返上で頑張った時もありました。

 この分離菌薬剤感受性を「感受性ありの率」で示したものをアンチバイオグラムと言います。細菌感染症の治療は、患者背景(患者さんの重症度や免疫能、環境・経過など)と感染巣(感染を起こしている臓器)および感染原因細菌(まだ判っていない間は想定菌)の3角形(感染症診療のトライアングル)から導き出される最適な抗菌薬を選択して開始することが求められます。これを初期治療と言いますが、単に使い慣れた薬剤を選ぶのではありません。どんな感染症にも同じ抗菌薬で初期治療を行うのは、適正使用とは言えません。また、抗菌薬が不適切な感染症もあります。

 アンチバイオグラムの利用法:同じ細菌であっても薬剤感受性は、夫々の医療機関によって異なります。想定される菌を決めたならば、その菌に対して最も有効であろうと考えられる抗菌薬を(各医療機関での)アンチバイオグラムを見て選択するのです。教科書的な標準的薬剤や添付文書にある「有効菌」のみを参考にしては、目の前の患者さんの治療には不適切な場合も多いのです。これらの思考過程を省略して抗菌薬を処方してしまう医師にとっては、アンチバイオグラムは紙屑にしか思えないでしょう。もちろん、使用しようと思う抗菌薬と想定細菌との全ての組み合わせのデータはありません。

 このアンチバイオグラムの基になるデータは、培養検体からの分離菌に対して調べた薬剤の結果から成っています。分離菌に対して全ての抗菌薬を調べる訳にはいかずその必要もないので、よく使われる代表的な抗菌薬を予め定めておきます。これを感受性薬剤セットと呼んでいますが、そのセットをこの度改定しました。「倉敷平成病院M2セット」と言います。検査ゼンターが推奨する「M1セット」もありますが、当院の感染症治療の実情に合わせてM2セットを作成しました。培養検体の信頼度を考慮して、培養結果から抗菌薬を選択して行うのを最適治療と言います。その選択根拠になるのが培養検査セットの結果です。
 当院の感染症治療が、ますます適正な抗菌薬使用によって行われることを願って止みません。

医師 玉田

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2009年7月21日 (火)

豪雨の津和野

郷里の岩国に近いのですが今まで行ったことのない津和野へ行ってきました。夜間に激しい雷雨で何度も目が覚めたり一時停電したりで熟睡できず、また翌日、町内を流れる津和野川の波激しい茶色の濁流に心配したりでした。掘割も泥水で、鯉の姿は泳いでいると判る程度で残念ではありました。

しかし、津和野出身の画家 野光雅(あんのみつまさ)の0907211 常設展示美術館安野光雅美術館 写真)を訪れ大いに満足できました。ヨーロッパの街並みや森の風景を主体とする味わい深い水彩画は以前から好きな絵の一つでした。

展示物に、画家として心がけている事を綴った文章があり、その中に、「自分は絵が下手でまだ子供だからと思えば安心でき、他人からの忠告(敢えて描き入れていない動物や建物を、周りから見ている人か0907212 ら、馬がいるだろうとか塔が無いじゃないかと言われること)を素直に聞き容れることが出来る。」という趣旨の文がありました。

大成した画家にしてこの心境なのかと感心しました。私たち医療職にも通じることです。ある程度経験を積むと、自分の判断や行動を批判された時に、「よく知りもしないのに余計なことを言う人」と無視しがちですが、「自分は未熟でまだまだ子供と同じ」と思えば気持ち良く批判を受け容れることができると思われます。


土砂降りの中、偶然入った三松堂という和菓子屋で買い求めた「鯉の里」(周りをかすかに硬くしてある柔らかい羊羹)は、後でガイドブックを見ると、お勧めの一品でした。(前回に続き和菓子の話で申し訳ありません。)

  

呼吸器科  玉田

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2009年6月20日 (土)

ちょっと気になる元気な病院

 本年の7月1日から当院はDPC対象病院となり、この日以降に入院される方から、入院費用の計算方法が変わります。6月6日の当ブログで解説してあります。既にDPC対象病院になっている病院を退院された方々から伝え聞こえてくる声には、「(入院して)○○日過ぎたので、退院して下さい。と言われたが、まだ一人での生活がままならない。」、「もう少し養生してから退院したいのに、退院を急かされた。」といった内容のものがありますが、DPC対象病院だからといって入院期間が制限されている制度ではありません。入院費用の計算方法がこれまでの出来高算定のみではなくなるというだけのことです。「1日の入院費は、同じ病名であれば標準的な診断・治療を想定して一律とする。但し、重症度や併存症を加味して同じ病名でも算定額は多少変動する。一定の日数ごとに1日の入院費が変化する(低額になる)ので、全入院期間の入院費を日数で割ると、入院期間により差が出る。」などの特徴がありますが、標準的な医療を推進し、医療を受ける人(入院患者さん)と医療を提供する側(病院)の双方にとって合理的で納得のいく医療費にしようというのが、DPCのねらいです。
当院では、DPC対象病院となっても、これまで通り「救急から在宅まで」のモットーを貫き、「○○日が経過したのでとにかく退院を」というような対応はいたしません。

 先週の日曜日に郷里の岩国に帰る際、少し足を延ばして防府まで行きました。実は、NHKの「街道てくてく旅 山陽道」の6月3日放送で、主演(?)の元シンクロナイズドスイミング選手原田早穂さんが、宮市宿(防府天満宮がある所)の山陽道沿いで、「ちょっと気になる」店に立ち寄るシーンがあり、おいしい「生外郎」の紹介があったからです。外郎は山口県の名菓で、特に「原要の外郎」や「豆子郎」は大好きなのです。しかし「生外郎」は知りませんでした。どうしても食べたくて出かけた訳です。それは、数井製菓という小さな店でした。家族の皆さんで製造販売している様子でした。テレビ取材は突然で、アポなしだったとのことです。これまで食べたなかで最高の味でした! この店の周囲には、開いている店は殆どなく割合さびしい街道ですが、この店は元気でした。きっと御自分たちの仕事に自信と誇りを持っておられるからなのでしょう。

 当院も、小さいながらも元気で誇れるものを持つ病院です。アポなし取材があっても、平生心で応対できる「ちょっと気になる」病院でありたいものです。

Photo蛇足:名古屋に全国ネット的な「青○ういろう」というのがありますが、その味はまるで石鹸のようであり、山口県の外郎とは全く違います。ことに数井製菓の「生外郎」とは比較になりません。「青○ういろう」だけが外郎だと思っている人は、考えを変えましょう。

   

呼吸器科 玉田

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2009年5月20日 (水)

新型インフルエンザH1N1について

新型インフルエンザH1N1の情報収集に明け暮れる毎日が続きます。本音を言えば、5月19日の段階では、既に「A型インフルエンザ 香港」 と同じように「A型インフルエンザ メキシコ」としてこれまで通りのインフルエンザ対策を行うべきではないかと思っています。

医療従事者は、季節性インフルエンザに対して、使い捨てのサージカルマスク・ゴーグル・帽子・ガウン・手袋を着用して診療を行うことが求められていました。そして患者さんの診察や収容は「隔離」を原則としていました。

今回の「新型インフルエンザ」も、確定診断を求める以外は厚生労働省の指針は同様に受け取れます。(季節性インフルエンザも、その動向を調査するには遺伝子検査を行って、ウィルスの型を確定しているのです。) 

インフルエンザ香港型(1968~1969に初回流行)もその時代にとって「新型インフルエンザ」だったのですが、今は「季節性インフルエンザ」となっています。今回の「新型インフルエンザH1N1」も同様になるでしょう。

潜伏期間がやや長く、多くの人にとって重症化しない呼吸器感染症は、その蔓延を防止することは極めて困難なものです。基本的な感染予防・治療を個人レベル・医療施設レベルで行うしかないと思います。社会生活を極端に制限するような考え方には無理があります。

 ゴールデンウィークには、ラジコン飛行場とDIYの店そして自宅と倉敷平成病院を結ぶ動線以外には出かけませんでした。何をしていたかと言うと、10年以上前に墜落させた自作(といってもキットから作り上げたものですが)のラジコン飛行機を修理再開していました。

090520 写真は今日の状態です。エンジンを包むカウルの復元がほぼ終了し、今は窓(キャノピー)の部分です。 最初から作るよりも作業は複雑となり時間もかかりますが、愛着を込めて作った機体の修復はさらに愛着を深め楽しいものです。   

呼吸器科 玉田

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2009年4月20日 (月)

言葉を正確に使おう

「言葉を疎かにすることはつまり内容をいい加減に扱っていることになる」(新潮新書 里見清一著 偽善の医療 146ページ)
当院においては、以前に中心静脈カテーテルのことを「IVH」と称していたのを「CVライン」と正しい言い方に変え、その言葉が定着しています。(参考 : IVHとは、「静脈内高カロリー栄養」という栄養方法のことであり、その時に必要なのが、「中心静脈カテーテル」です。逆に中心静脈カテーテルを挿入した場合にIVHを行うとは限りません。「IVHを入れます。」といった説明や指示をしていた時代がありましたが、IVHは入れることのできる物体ではないので意味が通らず、「CVラインを入れてIVHを行います。」 あるいは「CVラインを入れます。」という言い方が内容を正しく伝えています。)
最近気になる言葉使いのひとつに「IC」があります。これは英語のインフォームドコ090420 ンセントの頭文字をとった略号です。原意は、「情報を与えられ説明がなされた上での同意」です。「説明と同意」や「納得医療」いうような言いかえは不正確であり意訳しすぎです。医療に限定した言葉ではないはずですが、医療に限定して言うならば、ICを表明する主体(あるいは主語)は医療を受ける側(患者さん側)です。医師を含む医療者側が「行う」ものではありません。医療者は、ICを「得る、もらう、取り付ける」のです。
現在、当院においては、「IC室」 「○月○日○時にIC予定」 「ICをするので家族に連絡して下さい。」 「IC用紙」 などの言い回しが日常的に行われています。
これらは全て誤用であり、「説明室」 「○月○日○時に説明予定」 「説明をするので家族に連絡をして下さい。」 「説明用紙」 とすべきなのは誰の眼にも明らかです。
「IC室」・・・この部屋に入ると同意させられてしまう恐れを感じます。「IC予定」・・・何が何でも同意させるぞという凄い意気込みが感じられます。「ICをするので家族に連絡して下さい。」・・・医療者が何かの同意を家族に表明するのでしょうか。「IC用紙」・・・同意することが前提の書類のようで怖いです。
ただし、「意味がそれとなく通じるなら、たとえ誤った使い方でもそれでいいじゃないか。」と軽く言う人がおられるかもしれません。そんな方は、冒頭の文をよく噛みしめて下さい。

医療を受けられる側も実践する側も、共通の言葉でお互いによく理解しあうことが肝要です。「IC」以外にも何気なく誤った言い回しをしている言葉があるかもしれません。気づけば一つ一つ直していきましょう。

呼吸器科 玉田

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2009年3月21日 (土)

感染症のトライアングル

2008年度第2回目の、院内感染対策委員会 院内研修会を、3月17日に行いました。細菌感染症に用いる「抗菌薬の考え方と使い方」の基本について、述べましたが、要点は以下の2点です。
① 感染症診療では常に「感染症のトライアングル」を考慮する。 
② それぞれの抗菌薬の位置づけをしっかりさせる。

① と② は図のように、患者(背景)を中心に感染部位、感染微生物、抗菌薬の3者をそれぞれ結びつけて考えるということです。すなわち、感染をおこしている臓器は何か。そこに関与している可能性の高い微生物は何か。患者背景―感染部位―微生物 から導かれる標準的推奨抗菌薬は何か。と考えていく訳です。これらの一部を省略して「とにかく抗菌薬○○を使っておけば大抵は間に合う」としてはいけないということです。
0903211 治療効果を最大にし、かつ耐性菌を増やさないように配慮する治療計画が大事です。
抗菌薬を処方する時に、患者さんへ「貴方に処方する抗菌薬の目標菌は、○○や△△です。××を狙う必要はありません。」と言えなければなりません。面倒で0903212_2 あり、考えたことが常に正しいとは限りませんが、できる限り原則に忠実に処方していきたいものです。各薬剤の日本の添付書に記載してある有効菌種や感染症が、標準的推奨抗菌薬として意味されるものではありません
感染症のトライアングル」からみて、世界的に認められている組み合わせを知っておく必要があります。

 

 呼吸器科 玉田

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2009年2月20日 (金)

医師として・・・

41utaipxpkl_ss500_1  新聞の書籍広告の題名に惹かれて、春日武彦(精神科医)著「精神科医は腹の底で何を考えているか」(幻冬舎新書)を購入しました。精神科医である著者が、自分自身や周囲の医師を類型化して100人の(精神科)医師像を紋切型に表現し、その内容を語っている本です。「精神科以外でもそんな医師は、いるいる。うまく表現しているな。」と感心したり、「まさか。」と思ったり、「こんな風に思われているかもしれない。気を付けなくては。」と反省したりして読み終えました。

 
 その中で、印象深かったDr.X― について抜き出してみます。
Dr.1―認知症の老人にハルシオンを処方する医師:著者が痛烈に批判したい医師像と思われます。 
Dr.10―医療者の発想と患者の発想とのギャップに気付きそれを埋められる医師:私自身、日頃からそうありたいと思っている医師像ですが、なかなか難しいものです。
Dr.33-患者のいいなりに薬を出し、望み通りのコメントを語ることで好評を得ているカラッポ医師 
Dr.45-商売熱心で保険点数や薬価についてはやたらと詳しく、パンフレットには「優しさ」「思いやり」「親身」といった言葉をちりばめたがるオーナー医師:反面教師的な医師像です。好評を得ていないしオーナー医師でもないので、そうでないと一応自負しておりますが、重々注意が必要です。
Dr.56-患者の自由意志を尊重するかのごとき姿勢をみせつつ、思惑通りにならないとたちまち掌を反して素っ気ない態度になる医師 
Dr.57-誠実かつ信念もあるが、新興宗教の教祖と大差のない医師:ひょっとするとこんな風になっているかもしれないと自省すべき医師像です。
Dr.100―倫理や哲学の領域に属す問題と現場で向き合いつつも、それに答えを出せぬまま診療に忙殺されている医師:著者自身の姿だと言いたいように受け取れます。私自身もこのように感じています。

 医師免許を取得して35年経過しました。まだまだと言うより常に知らないことが多過ぎる毎日です。あと何年医師を続けられるか分かりませんが、自信に満ちた診療の到達点は見えてきません。それでも毎日の診療現場が待っています。腹の底ではこんな風に考えています。

呼吸器科  玉田
 

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2009年1月20日 (火)

倉敷美観地区の禁煙を望む

タバコの煙を気にせず食事ができるレストランがイオンモール倉敷で増えました。以前に、その中のあるトンカツ店で、‹禁煙イエローカード›を置きながら、「禁煙になればもっと気軽に楽しく食事ができるのに」と要望を述べたことがあります。その店も禁煙となり、その周辺店も禁煙になって来ました。不充分ですが、「禁煙タイム」を実施する店も多くなってきました。色々な食事を気持ち良く楽しむことが出来るようになり、家族皆で喜んでいます。

0901201  私の毎日の通勤路である倉敷美観地区は、朝の通勤時間帯には観光客はちらほらですが、土曜日の帰宅頃は大勢の観光客で賑わっています。しかし、混雑する中でも歩行喫煙する人がおられ、「美観地区」に似つかわしくない光景です。いまだに禁煙地区になっていないのは残念でなりません。せめて歩行喫煙が禁止されるよう倉敷市条例が制定される日を待ち望んで0901202 います。
喫煙者の皆さんからすれば「喫煙の愉しみを奪い取る禁煙ファシズム」だとの不満がでるかもしれませんが、不特定多数者の中での喫煙は、ご自身の愉しみに留まる行為ではありませんから、今や多数派となった非喫煙者の「煙草の煙に邪魔されることなく食事や観光を満喫するという愉しみ」を奪うことになる喫煙が制限されることには、理解を示していただく必要があります。
健康を守り増進する発信地であるべき医療機関での禁煙は当然のことであり、当院でも「敷地内禁煙」を実施しています。当院を利用される殆どの方が、これを理解され実行していただいています。今後、季節が変わり外気が気持ち良い気候になっても、この状態を続けていただくことを切に希望しています。
                                                       
呼吸器科  玉田

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2008年12月20日 (土)

責任の所在

病院機能評価での病棟審査に立会いました。081220

細部にわたり質問を受けなんとか回答できましたが、その際に指摘されたことは、「責任の所在を第3者に分かるように明らかにする。」ということでした。

「それを実行するための指針を病院組織として表明しておくことが必要なのだ。」とも指摘されました。正論です。
指針のひとつが、「○○マニュアル」です。私が関与しますのは、「院内感染対策マニュアル」です。
出来るだけ、「なぜそのような行為を必要とするか」という目的と「誰がそれを行うか」という主語を入れるように努力はしましたが、いまだ未完成です。(日々、考え方や標準が変わりますから「完成」する日は到来しないかもしれません。)

「目的」が時代とともに変わることはないはずですが、その目的を達成するための「手段」は変わっていきますし、変えるべきです。

一度決めた「手段」ではない方法を実行している、実行したとしても、その手段の「目的」を外していなければ非難されるべきではありません。行政や評価機構からの指導の中には往々にして、「手段の目的化」があることは以前にも述べました。ここを履き違えると、マニュアルが足かせになってしまいます。


 マニュアルに近いものとして、「○○ガイドライン」というものがあります。診療場面では、主に特定の疾患についてのガイドラインです。このガイドラインも「その疾患の診断治療を適切に行うため」という目的があって、その手段について述べてある訳です。

内容は、そのガイドラインを作成したグループ(個人作成のガイドラインは無いように思います。)が、「こうするのが良いであろう」と推奨する方法(手段)であり、改訂を前提に作られています。
この内容に従って診療することが義務づけられているのではありませんが、世界的あるいは日本においてその疾患についての概念や一般的治療法を知る良い指標になります。但し、改訂を前提にしてあることから分かるように、「常に正しい内容とは限らない」こともよく理解しておく必要があります。 

呼吸器科 玉田

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2008年11月19日 (水)

抗菌薬の名前の由来

細菌感染症や真菌(カビ)感染症に使われる抗菌薬には多種類あります。最近では同一成分のジェネリック薬品も増え、商品名も様々となってきています。それらの市販品の名称は販売上の戦略で決めているようですが、その基になる抗菌物質の名前の由来について書いてみます。それらを知ることは直接役には立ちませんが、なかなか楽しいものです。

●ペニシリン(抗生物質の代名詞のように使われる言葉)
ペニシリウムというカビ(真菌)が、細菌に対する抗菌物質を持っていることをアレクサンダー・フレミングが発見した。そのペニシリウムに由来する。(フレミングは、2週間の休暇の間、細菌を蒔いた寒天培地を室温に放置しておいたので、落下したカビのペニシリウムが増えて、抗菌作用を示すに至ったとのことです。大発見には休暇が必要!)

●セファロスポリン(最も多く使われている抗生物質の種類)
 イタリア人のジュセッペ・ブロツがイタリアのカリアリ(地名)の下水が海に流れ出る所の海水が時々きれいになっていることに気づき、その水中にいる微生物の産生する抗菌物質を突き止めた。その微生物はセファロスポリウム・アクレオニウムであり、その抗菌物質をセファロスポリンと名付けた。

●バンコマイシン(耐性菌のMRSAに対して一番目に選択される抗生物質)
 ボルネオの土壌サンプルがリリー社の有機化学者に送られたが、その土壌の中にグラム陽性菌に対して著効を示す抗菌物質を産生する細菌がいた。その抗菌物質をvanquish(征服する)という単語になぞらえてバンコマイシンと命名した。

●リファンピシン(結核菌に対する治療薬)
 リファンピシンはリファマイシン系の抗生物質である。この抗菌物質の基はフランス領の島の土壌細菌から分離されたが、その島で「リフィ(フランス語の騒々しい喧嘩の意味)」という映画が上映されていた。研究者たちはこの映画を観たので、リフィにちなんでリファマイシンという名前をつけた。
(以上、岩田健太郎監訳の「抗菌薬マスター戦略」から抜粋しました。) Kokin

感染症に使用する抗菌薬の選択は、細菌感染症・真菌感染症と診断し、部位・臓器・重症度を決めて、その患者さんの状況から推定されるあるいは即時検査で判る「標的とすべき細菌・真菌の種類」を考えて行います。

さらには、環境中に耐性菌を増やさないようにする配慮をして最終的に種類と使用期間を決めます。もちろん、あとから判る結果や効果・合併症などをみて途中で変更することもあります。

(抗ウィルス剤が有効な場合を除き)ウィルス感染症や非感染症あるいは保菌状態の菌(そこに居るだけであり、その状態である限り有害でない菌)に抗菌薬を使用したり、標的菌以上(以外)の微生物も対象にするような抗菌薬を選択すると、耐性菌を増やしてしまうことに繋がります。

呼吸器科 医師 玉田二郎

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2008年10月20日 (月)

医療廃棄物についての考察 ドイツが羨ましい

藤田保健衛生大学医学部第一病理学教授 で 東京都医療廃棄物適正処理推進協議会副議長の堤 寛 氏は、医療廃棄物の処理に関して以下の要旨の提言をされています。
( 
www.fujita-hu.ac.jp/~kimigaai/study/naiyou/haikibutsu.htm )

問題提起 医療ゴミの取扱いにユニバーサル・プレコーションの考え方を持ちこむべきか?
ユニバーサル・プレコーション(標準予防策)は、すべての体液・血液・滲出液に感染性があるとみなして取り扱う院内感染対策の基本的考え方である。言い換えると、全ての患者や医療者が病原体キャリアであるとする考え方である。日本の現行法の下では、このユニバーサル・プレコーションの手法をそのまま廃棄物に適応し、体液・血液・滲出液が付着した医療ゴミは、感染性の有無にかかわらず「感染性廃棄物」とみなされ、焼却処理を中心とする滅菌処理が求められている。一般家庭からの血液・体液の付着したゴミは、エイズや肝炎ウィルスのキャリアからのものも含まれるが、一般廃棄物として処理されている。それらの危険性はないのか。また一般家庭での医療行為による廃棄物(腹膜透析器具・点滴セット・インスリン自己注射器具など)は医療廃棄物とはみなされていない。また、これらの一般家庭医療関連廃棄物を、廃棄物の収集・運搬の許可を受けていない医療機関や薬局が回収することは、公式には認められていない。院内でのユニバーサル・プレコーションの手法を医療廃棄物処理に持ち込んではならない。
 ドイツのガイドラインでは、医療ゴミをA~E群に分けている。A群:一般廃棄物 B群:MRSAやセラチアなど院内では感染性が問題になるが、環境中での危険度は低い感染性廃棄物であり、消毒せずに排出する。(消毒は環境への負荷となり、してはならないと考える。) C群:環境に出す前に消毒を要する伝染性病原体の付着した医療ゴミ(コレラ菌、チフス菌、結核菌、プリオンなど) D群:有機溶剤などの化学物質(リサイクルする。) E群:100ml以上の血液・臓器(倫理的観点から焼却する。) 処理すべき感染性廃棄物とはC群のみをさす。
血液・体液等の付着した固形廃棄物は容器内に閉じ込めていて、地方自治体が責任をもって処理する。 C群以外の感染性微生物の混入した液体や少量の血液を下水に流すことは、希釈されて環境での感染が成り立たないので、問題ないとされている。
  日本の廃棄物処理法(法律)は、その対象がもともと建築廃材、工場廃液、屎尿や下水汚泥の処理のためのものであり、全廃棄物の0.1%以下の医療廃棄物を同じ法律で同等に扱うことに無理がある。独立した、「医療廃棄物処理法」の制定をめざしたい。

 以上が、要旨ですが、これらを見て感じることは、日本の規制は、作成委員にいわゆる学識経験者が多いにもかかわらず極めて観念的であるということです。社会全体を見渡して目的(到達点)を決めて合理的な政策を立てることはできないのでしょうか。以前にも書きましたがここにも、「医療機関のみを厳しく指導すればよい。」といった、「手段を目的化する」弊害が生じています。
追記:数日前のテレビで、ドイツの自転車道についての特集をしていました。日本では、自転車に乗る人への規制を厳しくしておけばよいとする道路交通法です。総合的に考えると社会への経済的負担を小さくする自転車という環境と体に優しい素晴らしい乗り物を安全に使える日が来るのはいつのことでしょうか。
(いろいろとドイツが羨ましい!)

呼吸器科  玉田

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2008年9月20日 (土)

感染対策マニュアル改訂版の作成

 Nikkei BP net に、事故米に関して 猪瀬直樹の「眼からウロコ」 米農政は社会主義のようだ〜農水省・農政事務所のあきれた体質と仕事ぶり 2008年9月17日。 という文章がありました。その一節に以下の部分があります。

―――――そこで僕の頭に浮かんだのは、1960年代後半に読んだ、埴谷雄高氏のソビエト紀行である。そのなかに「ソビエトの電話」にまつわるエピソードがあった。

 モスクワの空港で、待合室に電話が置かれている。埴谷氏が電話をかけようと受話器をとっても、壊れているのかツーとも音がしない。当時のソビエトには、そういう光景が当たり前にあった。すると、女の事務員がやってきて受話器をとり、なにかをしゃべっている。どうやら業務報告をしているようだ。「……以上であります」と言って受話器を置くと、事務員は帰っていった。それも一度ではない。壊れていなかったのだと思い、埴谷氏はふたたび受話器を手にする。しかし、何度試してみてもやっぱり通じない。女の事務員は、だれも出ない電話にむかって業務報告をしていたのだ。
電話というのは相手に通じなければ意味がないはずだが、ソビエトの官僚組織では報告したという形式だけが重んじられる。報告の内容が向こうに届いていなくても、報告したという行為があればいい。それで物事が動いてしまう「滑稽さ」と同時に、「怖さ」を感じるエピソードである。このエピソードは、ソビエト崩壊を予感させるものだった。農政事務所も、形式だけの検査をして帰ってくることが仕事になっている。なにかを発見してくることは、彼らにとって仕事ではないのだろう。国家も役所も、その終焉における風景は同じである。しかし、そのとばっちりで焼酎やご飯に毒が混じっては、国民はたまったものではない。―――――

 12月の病院機能評価に向けて、院内感染対策委員長として「感染対策マニュアル」の改訂版を作成中です。マニュアルは量が多いと誰も読まず意味のない書物になってしまいます。簡潔を旨とし最低限の内容のものにするよう心がけています。さて、この機能評価に合格するためには、最低条件として、「文書化した記録の保持」があります。日常の対処として滞りなく「感染対策」をしていても、その元になる基準の文書や記録がなければ合格点が貰えない訳です。逆に「文書化された基準」や「記録の保持」があれば、それが実行されているかどうかに関係なく合格点が貰えるのかと思ったりします。このことに本当の意味があるのかと普段から疑問を持っていましたが、上記の猪木直樹氏の文章を見て読み換えることができると気づきました。
 「病院機能評価の機構組織では文書化したという形式だけが重んじられる。内容が実行されていなくても、文書化という記録があればいい。それで評価が決まる『滑稽さ』と同時に『怖さ』を感じる。」
とは言え、当院を利用して下さる方々や我々職員の感染対策をおろそかにすることはできません。現在行っている対策がより漏れなく実行できるように「対策マニュアル改訂版」と取り組んでいる毎日です。そう、正に毎日、帰宅してから3時間前後の時間外無報酬業務です。 

 呼吸器科 玉田

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2008年8月19日 (火)

日本との違い

8月の上旬に、5日半の年休をいただき、やっと11年目の「新婚旅行」に行ってきました。宿泊地は、ウィーン、ザルツブルグ、ミュンヘン、フランクフルトで、主に徒歩・電車(市街電車・地下鉄・列車)の旅です。いわゆる観光地も周りましたが、一番印象に残っているのは次の点です。ウィーンの市街電車とザルツブルグのトロリーバ スには、日本と同様に運転手の脇に切符入れや運賃入れが有りましたが、他の市街電車には運賃入れは無く、運転席とは物理的に遮断されていました。ミュンヘンの市街電車には車内に発券機がありましたが、フランクフルトでは電停に発券機(写真)があるのみでした。地下鉄駅にはホームに降りる前に切符の自働発券機が0808182 ありそこで切符を購入するのは日本とほぼ同様ですが、改札口はありません。無人の「改札口」風の出入口に切符の「刻印機」が有って、切符を差し込むと日時が刻印されます。(刻印しなくても自由に通り抜けられます。)車内での車掌による改札はありません。列車駅には改札口も刻印機もありませんでした。切符を購入するとそのままホームに行き列車に乗り込みます。長距離列車内では車掌による改札はありましたが、列車を降りるとそのまま駅から出ます。これでは、無賃乗車はやりたい放題? これで社会秩序は守れるのか! しかし、時々廻っている(ひょっとすると常に巡回している)一見乗客風の車掌によって無賃乗車・不正乗車(刻印をしていない切符)は厳重に見張られているようです。フランクフルトの市街電車の中で、ピンク色のナイキの肩掛けショルダーを持った普段着の女性(実は車掌さん)に改札を求められました。その時、乗客の一人(おそらくドイツ人男性)は、強く叱責されている風であり、車掌さんの持っている末端機に何やら入力させられていました。(氏名・連絡先などと思われます。)かなりの罰金が待っているようです。ただ、このようにして摘発される不正は一部に過ぎないのではないかという疑問もあります。日本の交通システムは、不正乗車を暴くためにあらゆる手段を講じ、その手段に要する設備投資や人件費等の支出増による減収と、そのシステムを敢行させるための利用者の時間浪費による社会的損失の総額が、不正乗車摘発による損失回復総額よりも多くても仕方がないという考え方と思われます。一方、オーストリアやドイツのシステムは、不正乗車の一部しか暴くことはできなくてもトータルで社会的損失の少ない方法を採ればよいという考え方のようです。不正乗車をする人の頻度が関わって来ますが、オーストリア・ドイツにおいて、抜き打ち改札のみによる不正抑止が期待できるということは、日本社会よりも、「より恥を知る成熟した社会」と思えて「恥じ入る」ばかりでした。目的をしっかりと定めて、その為の手段にはとらわれないという実際的な社会に魅力を感じます。(日本では、何事によらず「手段」を目的化したような規制が多いように思えます。)
 
上記以外にも「列車や地下鉄の大型犬(小児と同額運賃。列車内で車両移動をす0808181る時にハスキー犬の足を踏みそうになりました。)・自転車(折りたたまずにそのまま持ち込めます。)・大型ベビーカー(ディスクブレーキ付きのしっかりした車輪のレーサー風が多い。)の持ち込み区画のある車両(日本では見たことがない。)」、「自転車道(写真。自転車道をうっかり歩いていると自転車の人に強く注意されました。自転車道のない所では自転車は必ず車道を走っていますが、車の直前で止まって信号待ちをしても車はクラクションを鳴らしていませんでした。)」、「横断歩道(信号の切り替わる時間が日本の半分以下。)」、「無料の高速道路(徐行時が時速100Km)」、「路上駐車(歩道が広いので歩道へ少し乗り上げた駐車が許される区域が多い。)」、「優先座席への乗客マナー(どちらかと言うと日本の方が良い)」などについて日本との違いを感じました。
また、スタンド・コンビニや屋台で売っている飲料水の殆どが甘い炭酸飲料か天然 水(炭酸入りが多い)であり、スポーツドリンクや野菜ジュース・コーヒー飲料が見当たらないことにも驚きました。ホテル内(宿泊室を含め0808183て敷地内禁煙。写真は室内にあったメッセージカード)・店内・車内は徹底した禁煙ですが、カフェテラスや屋台周辺・歩道は喫煙自由で喫煙者は多く、電停には吸い殻入れがあるものの、歩道や遊歩道に吸い殻が散乱しているのは日本の街路以上でした。どの店の値札シールもきれいに剥がせるので感心しました。非常に暑い日もありましたが、蝉が鳴かず蚊がいないのはとても不思議でした。これらについての考察はまた別の機会にしたいと思います。 
 

呼吸器科 玉田

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2008年7月22日 (火)

医療難解語100選

7月8日の朝日新聞に「医療難解100語言い換え 国語研 来春までに指針」という記事と難解100語が載っていました。国語研というのは国立国語研究所のことです。
医療・介護の現場で使われる言葉は、医療や介護を受けようとされる人に理解されなければ、単なる暗号になってしまいます。もっとも、医療職・介護職の側もその言葉を完全に判って使っているかと言うと、そうでもない場合も多いと思われます。略号の原語、その原語の由来・当初の意味・時代の進歩とともに変化して来た意味や原語、誤解に基づき流布してしまった違った解釈の仕方、などを全て正確に知っているかと言うと「?」です。
 「理解する」「判る」ということは、各個人で意味する程度が異なるでしょう。例えば、「男」が判るかと問われたなら、大抵の人は判ると答えるでしょう。しかし生物学的な意味での「男」、社会学的な「男」、など突き詰めて議論すると「結局よく判らない難解な言葉。」と言うことになります。
相互理解のためには、双方が同じ程度に「判っている」、あるいは「判っていない」方が良いのかもしれません。その方が「話が合う。」かもしれません。聞き覚えがあり知っていると言う事と、理解しているということは同じではありませんが、何となく知っている程度が気楽なのかもしれません。080722
しかし、それでは「無駄のない、適切な医療・介護」は実践できないでしょう。相互理解の為には、双方が同じ程度に「よく理解」できなければいけません。
先の「医療難解100語」の全仁会としての「翻訳語」を、来春以前に完成させたいと思っています。それぞれの専門分野の人に作っていただくのが良いのでしょうが、与えられた仕事ではありませんので、なかなか作業が進まないでしょう。僭越ながら、少しずつ作って行きますので、ご批判下されば幸いです。(このブログで一語ずつ作って発表下されば、5か月後、12月末には100語完成するのですが)
これらの100語以外にも「難解医療語・介護語」がありましたら、病院の「御意見箱」などでお知らせ下さい。以下に100語を紹介します。(新聞記事とは順番が異なります。)
略号(10語) ADL  COPD  CT  DIC  EBM  HbA1c  MRI  MRSA  PET  QOL

カタカナ語(28語) 悪性リンパ腫 イレウス インスリン インフォームドコンセント 
インフルエンザ ウィルス エビデンス ガイドライン カテーテル 緩和ケア 
クォリティーオブライフ クリニカルパス グループホーム ケアプラン コンプライアンス 腫瘍マーカー ショック ステロイド セカンドオピニオン ターミナルケア ネフローゼ症候群 ノロウィルス プライマリーケア ホスピス ポリープ メタボリックシンドローム リスク レシピエント

漢字・平仮名語(62語)
 悪性腫瘍 院内感染 鬱血 鬱病 壊死 炎症 黄疸 介護老人保健施設 潰瘍 化学療法 かかりつけ医 合併症 川崎病 癌 寛解 肝硬変 間質性肺炎 既往歴 狭窄 狭心症 虚血性心疾患 血栓 血糖 抗癌剤 膠原病 抗生剤 抗体 誤嚥 集学的治療 重篤 腫瘍 自律神経失調症 心筋梗塞 浸潤 振戦 腎不全 髄膜炎 生検 喘息 譫妄 塞栓 尊厳死 対症療法 耐性 治験 統合失調症 糖尿病 動脈硬化 頓服 肉腫 熱中症 脳死 敗血症 肺水腫 白血病 日和見感染 貧血 副作用 慢性腎不全 免疫 予後 臨床試験

翻訳例(ブログ筆者による)を以下に述べます。
“EBM”
 Evidence Based Medicineの頭文字 直訳「根拠に基づく医療」 
(意味)様々な根拠となる情報を批判的に吟味して、それまでの医療に付け加えてより適切な医療を提供しようとする手法。
(解説)
 EBMは手段であって医療の目的ではないし、ましてやランダム化比較試験のことではない。 「EBM=エビデンス即ちランダム化比較試験」と混同して使われていることが多いですが、これは完全な誤解です。だから、例えば「この薬にはEBMがある。」という言い方は意味が通りません。

ある薬の治療効果について大多数の人が参加した比較臨床研究(いわゆるメガスタディ)で統計学的な有意差があったとしても、それは特殊な意味での「明確なエビデンス」に過ぎないのであって、その薬が貴方に効くかどうかを示している訳ではありません。ですから、「明確なエビデンス」があるから使用すべきだという結論は出せません。小規模研究では差が出ずに、メガスタデイでやっとこさ有意差が出るような「はかない」エビデンスかもしれません。その統計的な評価を基に、「貴方の治療」を考えようと言うのがEBMです。ある治療法について、「大規模ランダム化比較試験がしてないのでEBMが出来ない。」と批判する人は、EBMの本質を知らない人です。

呼吸器科 医師 玉田二郎

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2008年6月20日 (金)

熱中症・飲む輸液

これから暑い夏の季節となります。水分・塩分の減少と高体温でおこる熱中症に注080620 意が必要です。
熱中症には4段階あります。軽い状態から順に、熱失神・熱痙攣熱疲労熱射病です。(当院での救急室では、マニュアルに沿った熱中症の診断・治療を行うことにしています。)
熱失神(日射病):水分不足・末梢血管拡張・筋の緊張低下でおこります。深部体温(以下同じ)は38度以下です。涼しいところで体温を下げます。(これは熱中症全てに共通です。)水分補給(経口ないし点滴)で治ります。

熱痙攣:高温環境で激しい運動を行っているか行った後に起こります。通常、水分補給を「水」のみで行っている時に起こりやすく、筋肉がナトリウム不足を生じています。大きな筋肉(大腿や下腿)の痛みを伴う収縮(痙攣)を起こしますが一過性であり、意識障害はなく体温は38度以下です。腹痛を伴うこともあります。体温を下げ、電解質を含む輸液(経口か点滴)で治療します。赤色尿の場合は要注意です。

熱疲労:体温は38度を超えますが40度以下です。頻呼吸となり嘔気・嘔吐・ふらつき・興奮などがあり経度の意識障害を伴うこともあります。脱水が著明な場合はより重篤です。塩分を補給せずに「水」のみを補うとナトリウム欠乏になり脱水が改善されません。電解質の検査を行いながら補液を行います。
早めに対策をとれば大丈夫ですが、遅れると危険な熱射病に移行します。

熱射病:40度以上の高体温が体温調節機能の破綻でおこり、昏睡・全身痙攣などの中枢神経障害をきたします。高体温持続による内臓の機能不全(多臓器不全)がおこり生命の危険があります。蘇生治療とともに1時間以内に体温を38.8度以下に下げる必要があります。多臓器不全への対策が必要です。


 古典的熱射病:体温調節機能が低下した高齢者や衰弱者に多く見られます。高温環境に曝されて、持続発汗による脱水がみられます。
 労作性熱射病:体温調節機能の正常な若い年齢層の人に起こりやすい状態です。高温環境下での運動による熱産生が熱放散の限界を超えて生じます。脱水は著明ではなく皮膚は発汗で湿っています。
向精神薬・抗パーキンソン病薬・精神安定薬・利尿薬などは熱射病になるリスクを高めます。マラソン選手のように高温化での運動に体を慣らしていれば熱射病になりにくいのですが、それには選手でも数週間かかります。
高体温を効果的に冷却するには、室温水を霧吹きで全身にかけ団扇や扇風機で扇いで「蒸発」を促進させるのが良いとされています。アイスパックを直接皮膚に当てるのは凍傷に注意する必要があり、広範囲に行うと皮膚血管を収縮させて放熱を阻害するので局所的に留めるべきです。

脱水時の補水(輸液)は、点滴輸液がベストではありません。経口でも効果はあります。
経口輸液(補水)は、WHOの提唱するORS(経口補水液)が最も効果的とされています。湯ざまし(白湯)のみでは、水分の吸収効率が悪く、また塩分補給ができず却って危険な場合もあります。(ナトリウム高値の脱水もありますが、水のみで急激にナトリウムを低下させるのも危険を伴います。)ORS(商品としては大塚のOS-1ですが、手作りも可能で、家庭で使うことには何の制限もありません。)水1リットルに対し、食塩5g・ブドウ糖20g(砂糖なら40g)・重層2.5g・塩化カリウム1.5g家庭で作るなら塩化カリウムでなくてレモン汁少々で良いと思います。
さらに以下の簡易版もあります。
簡易補水液: 水1リットルに対し、食塩3g・砂糖30g・レモン汁少々
スポーツドリンクは、ORSに比べると塩分が少なく、糖分が多いので「おいしく飲める」のです。これを利用するなら「ミネラルウォーター」で倍に薄め、食塩を少し入れるのが良いでしょう。

いずれにしても、喉の渇きを感じる前に少しずつ補水しておくのが最も安全な対策です。

呼吸器科 玉田二郎

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2008年5月20日 (火)

「共生」について

人は(人に限らず殆んど全ての生物は)多くの微生物との共生状態を前提として生きており、それらを見つけて来ては「病原菌」として叩き潰すようなことをしていると思わぬしっぺ返しを食らうだろうという話です。
「共生という生き方」 トム・ウェイクフォード著 遠藤圭子訳(シュプリンガー・フェアラーク東京社発行2006年4月)
105頁 1990年代初期にはヘリコバクター・ピロリ菌が胃潰瘍と結びつけられ、社会にとって危険な病原菌のナンバーワンになった。だが今では、この細菌は健康な胃の持ち主の半数近くにも存在することを微生物学者は知っている。ストックホルムのカロリンスカ研究所のスタファン・ノルマルクは悔悛した一人だが、(彼は)このバクテリアが人間の消化器系の正常なメンバーであり、病原性と(人間にとって)積極的な面の双方があると考えている。彼の研究チームは、ヘリコバクターがサルモネラ菌やO157大腸菌に対しての(抗菌)毒素を放出することを明らかにしている。080520
108頁 イスラエルのワイズマン研究所の免疫学者イルーン・コーエンは、私たちの過度の清潔信仰が喘息やもっと深刻なⅠ型糖尿病やリウマチ性関節炎のような自己免疫病の発症率を押し上げている可能性があると示唆している。ロンドンのユニヴァーシティー・カレッジの免疫学者グレアム・ルークによれば、清潔度の低い人を喘息・花粉症・その他のアレルギー疾患から守るのはミクソバクテリアだろうという。ミクソバクテリアは人の消化管内微生物群集の正常な一員ではないが、新生児期に曝されると免疫細胞が教育される。土壌・池・流れに通常みられるミクソバクテリアに曝されることが極端に少なくなった都会の子供たちは、免疫系の学習過程から遠ざけられている。

サイト「新しい創傷治療」 BBS過去ログ 2005年3月26日 [排除すべきエイリアンかそれとも共存者か] 投稿/ウミユスリカ 引用文献「ピロリ菌の意外な効用」M.J.ブレイザー著2004年
・・・・ヘリコバクター・ピロリ菌は胃潰瘍や胃癌の元凶とされているが、駆除して消滅すると胃癌のリスクは下がるものの、ピロリ菌の存在を前提とした人体の胃酸調節システムに狂いが生じ、胃酸の刺激によるパレット食道の発生、さらには胃癌よりも悪質な食道腺癌の危険性の著しい上昇がみられる。・・・
生物の常在共存生物集団は一定のリスクはある。しかし排除すると共存生物によるリスクを上回るリスクがふりかかってくることがある。(消毒しない傷の治療に関して)湿潤状態の維持や消毒液の不使用によって創傷面の組織の生存を保てば、皮膚上の共存生物群集の共存リスクは非常に低いレベルに抑えられる。
サイト管理人(夏井 睦)「皮膚の消毒を、常在菌叢を乱すほどに熱心にすれば細菌感染の機会を増やすことになってしまいます。皮膚常在菌は他の細菌対する強力なバリアになっている。

 呼吸器感染症においても、起炎菌(疾患原因菌)と保菌(たまたま居る一過性菌)や常在菌(おそらく何かに役立っている菌)とを区別して、叩き潰すべき相手は何か・抗菌薬で叩き潰す必要があるか・叩き潰してはいけないか、を見極める努力をして行きたいと思っています。もちろん全て部位の「感染症」に共通することではありますが。

呼吸器科 医師 玉田二郎

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2008年4月19日 (土)

人生の愉しみ

生き甲斐のある人生を送るには、やはり「愉しみ」が必要でしょう。もし収入を得るための職業そのものが楽しいとしてもずっと続けることは難しいと思います。多くの人にとっては趣味が愉しなのではないでしょうか。介護を受けるようになって初めて「愉しみを持ちましょう」と言われても、急に趣味を持つことは難しいように感じます。どんなに仕事や家事に追われていても、愉しみに時間を割くことができないことはないはずです。今からでも良いので、続けることができる「趣味」を持ちましょう

Model1 私の趣味を紹介します。子供の頃からですが「模型作り」が人生の愉しみです(何が一番の愉しみかと問われるなら、答えは家族との会話や共に遊んだり旅行に行ったりという事になりますが…)。
写真①は、15年以上前に作った蒸気エンジンで動く長さ1mのラジコンのタグボートです。天気の良い日に池のある所に出かけてアルコールを燃やして蒸気を作りやっと動き始めるので、楽しむにはかなり暇がある時に限られます。最近は出番がありません。Model2 写真②は10歳の我が子と一緒に製作途中のNゲージの鉄道模型です。鉄道模型は「初心者」なので既製品のセットです。これは家の中で電源を入れればすぐに動きますから、今日この頃も楽しんでいます。体力・視力が落ちても続けられるメリットがあります(完成には後4か月位かかりそうですが)。Model3 写真③は、まだ箱のままのラジコン飛行機です。1日30分の作業でもコツコツと作ることは可能ですが、今のところ手つかずで放置されています。完成の暁には広いラジコン用飛行場で、おもむろにエンジンを始動させて飛び立ち大空を駆け巡るはずです(一応、墜落させずに着陸できることはできるようになっています)。Model4 写真④は、最近は出番の無い(最後に飛行させたのは3年位前になります。)飛行機達です。長さは1m位です。置き場所に困るので廊下の上の手作り棚に載せてあります。主翼は別の部屋の天井近くの手作り棚に載せてあります。エンジンなどのメカニズムが無残にも抜かれている飛行機もあります(全てを可動状態にするには予算がかなり必要ですので)。視力が衰えると操縦が楽しめなくなるので、少々焦っているこの頃です。

この他にも、いつかは作ろうと思って買い求めそのままになっているプラモデル達も押入れに押し込まれています。反省しきりですが、模型製品は絶版になるのが意外に早いので買えなくなってしまったらとついつい目についた物を仕入れてしまっています。

呼吸器科 医師 玉田二郎

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2008年3月21日 (金)

あなたの肺年齢はいくつ?

Smoking_girl 腎臓や心臓などの内臓と同じように、肺の働きも年齢と共に低下するのは仕方ないことですが、その低下以上に病的な低下があるとすれば、それに気づいて対策をとることが必要と思われます。肺機能の評価は①自覚症状(息切れの程度や可能な労作の程度)②経皮酸素飽和度(SpO2 サチュレーションと称しています。)③肺の換気機能(肺活量などの測定) ④動脈血ガス分析(動脈血を採血して測定) などで行いますが、軽度の異常はなかなか見つけ出せないことがあります。
日本呼吸器学会では、「見た目では判らない肺の健康状態を知るヒント」として「肺年齢」を提唱しています。従来、肺の換気機能の評価は、男女別・年齢・体格(身長)で求められる平均肺活量に対する実際の肺活量(これを%肺活量と言います。)と、努力肺活量(一気に力を込めて吐き出した時の肺活量)に対する1秒間に吐き出せた量の割合(これを1秒率と言います。)の2つの数値を組み合わせ行ってきました。この評価方法は今後も変わりませんが、それだけでは異常を早期に指摘することが困難なことも判ってきています。
1秒間に吐き出せる量(1秒量)を測定して、平均的な1秒量(肺活量と同じように性・年齢・身長から求められる平均値)に対する割合(これを%1秒量と言います。)を評価に加えることが推奨されています。
「肺年齢」は、実際に測定した1秒量が、性・身長の同じ何歳の人に相当するかを示すものです。実年齢よりも多い場合は、肺機能が年齢以上に早く低下していることを示します。%肺活量と1秒率で求めた評価で異常のない人でも「肺年齢」が実年齢よりも10~20歳多い場合もあります。
呼吸器科では、肺機能検査を受けられた方に肺年齢を含めての評価を説明しています。当院の人間ドックでもこの指標を用いて異常の早期発見に役立てる計画になっていると思います。
喫煙を長期間続けていた方、続けている方は肺機能が低下している場合が多く、慢性閉塞性肺疾患COPD(肺気腫や慢性気管支炎)と診断される前に禁煙することが肝要です。気になる方は、気軽に呼吸器科を受診して下さい。禁煙外来も行っています。

呼吸器科 医師 玉田二郎

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2008年2月20日 (水)

病名付けについて

080219  保険診療では、「病名」が全ての基礎になります。

診断病名には、症状・症候そのままの言葉や、診察所見から導かれる診断名あるいは検査を行い推定・確定できるものなど、その根拠の確からしさは様々です。

医師としての経験や学習で得た知識、再検索した結果などを総動員して診断して「病名」をつけています。

以前は考えた病名をそのまま保険診療の「病名」として登録できましたが、最近では「標準病名マスター」という病名集に載っている病名かその病名に修飾語(急性・慢性・両側や○○の術後など)をつけたものしか登録できません。

呼吸器科でよく用いる診断名のうち、閉塞性換気障害・拘束性換気障害、咳喘息、気管支腫瘍、異型性腺腫様過形成、再膨張性肺水腫、ニューモシスチス肺炎などは「病名マスター」に無く、病名登録が出来ません。

 つい最近、両側気胸に皮下気腫・縦隔気腫さらには後腹膜気腫を合併した患者さんがおられました。気胸に後腹膜気腫を合併することは非常に稀ですので正確に病名を登録したいのですが病名マスターに無く、「後腹膜」「気腫」に分解しても登録不可能でした。

 医療費は主として医療行為や使用した薬剤が病名に照らして妥当であるかどうかに基づいて決まりますが、DPCという制度になると(既にその制度を導入している医療機関もあります。)入院費の大部分は「病名」と「入院期間」で決まります。

 それ故に、「病名」を正しく登録することが正しい評価を受ける基になるのですが、上述のように「正確な病名」が登録できない、即ち「類似した正しくない病名」で請求しなければならない場合もありえます。極端に言うと、日本で保険診療を受ける人は、「標準病名マスター」に載っている病気にしかなりようがないと言うことです。

 医師が勝手に好きなように付けた病名では、正確な疾病統計がとれませんが、「類似した正しくない病名」のみでも困ります。新しい治療法・対処法を考案・検討する為にも細かい観察による「正しい病名」登録ができるよう希望するものです。

研究用に病名を保険診療と切り離して2重に登録することも可能かもしれませんが一般診療の医療機関ではそこまで行うことは経費や必要時間から困難なことです。

「新しいことが登録できない。」に関連して、インターネットサイト「新しい創傷治療」の2008/2/14に次のような管理人の意見がありました。

金属学の研究者という方からこんなメールをいただきました。医学の常識は科学の非常識ということがよくわかります。 0802181

 『創傷治療の常識非常識』のamazonの書評に大変否定的なものがあり,その理由は「この常識にはエビデンスがない」からだそうです。実際に痛くなく早く治っているのに,それを医学では「エビデンス」と呼ばないのでしょうか。 私は金属学の世界で飯を食っている人間です。この世界もやはり新説異説は受け入れにくい環境があります。しかし未知なる現象に遭遇した場合,まずその事実を受け入れ,それがたまたまなのかそれともそこに「何か」があるのかを明確にし,それを定性、定量するのが科学であると恩師から教わりました。

 目前の未知なる現象を追求せず,たまたまとか何かの間違いとか,過去のデータを探しても見当たらないからと言ってしまうようでは,すでに科学ではありません。科学者でない,あるいは技術者でない医者が多いとしたら大変恐ろしいと感じます。「エビデンスがない」という意見に???なのです。

 要するに,未知なる現象に遭遇した場合,まずその事実を受け入れてそれを定性的,定量的に研究するのが科学,過去に書かれた論文を探すのが医学です。自分で考えずに過去の誰かの論文を探すことが医学会の証明法というなら,医学は科学ではありません。というか,新しいことを生み出せなくなります。

 医学はいつまでこんな馬鹿なことを続けるつもりなんでしょうか。過去に証明を求めている限り,未知の現象には対処できません。過去にエビデンスを求める姿勢では,未知の現象を理解できません。

呼吸器科 医師 玉田二郎

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2008年1月21日 (月)

気管支喘息

200121 20年以上前には、気管支喘息の発作を繰り返しおこす人が多く、症状コントロールが困難であった記憶があります。しかしその後、吸入ステロイド剤が広く使用されるようになってからは、発作をおこす人はかなり少なくなりました。もちろん最近でも、日常のコントロールが不充分で、思わぬ時に大発作や重積発作になってしまう人もおられます。
 気管支喘息の診療で常に注意しなければならないのは、他の疾患による喘息様症状です。気管や太い気管支の腫瘍や大きな異物による気道狭窄あるいは喉頭腫瘍などは厳密に区別する必要があります。これらの疾患や「心臓喘息」でも、気管支喘息の発作時の治療で症状が一時的に緩和することがあり注意を要します。
 倉敷中央病院で呼吸器外科医として勤務をしていた時に、当初気管支喘息と診断され数ヶ月以上経過した後に、気管腫瘍の診断がつき紹介を受け、手術を行なった方が二人おられました。喘息症状で発見された気管分岐部近くの気管支の腫瘍の方は、手術不能でしたが幸い放射線治療が奏効してほぼ完治されました。症状だけからでは確定診断が困難で、コントロール不良な喘息とされている間に原疾患が進行してしまうことがあります。
 一方、マイコプラズマ感染など気道刺激性の強い感染症時に喘息症状が出現することがあります。喘息治療薬の併用が必要ですが、原疾患が治癒すれば症状は治まり、喘息治療の継続は不要となります。
 当院呼吸器科では、診察前にご自身で記入していただく「喘息コントロールテスト」での状況を参考にしながら症状をお聞きし、聴診所見とピークフローメーターでの測定を行い、必要なコントロール薬(コントローラー)や発作時の緊急薬(リリーバー)を決めています。気管支喘息は気管支の慢性炎症が病変の本態とされており、完全治癒は困難とされていますが、吸入ステロイドを中心として抗アレルギー薬(抗ロイコトリエン剤)・長時間型気管支拡張剤などを適宜併用することによって症状が安定化する場合が殆どです。軽い発作時やコントロール不充分時には、短時間作用の気管支拡張薬の吸入を早めに行ない大発作への進展を予防します。
 私自身、夜間の喘息発作で不安なやや恐怖に近い一夜を明かしたことを一度だけですが体験しています。この体験を忘れずに気管支喘息診療に臨んでいる毎日です。

呼吸器科 医師 玉田二郎

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2007年12月20日 (木)

キズ・ヤケドを消毒する?!

0712191何事でもそうですが、医療においても「これが常識」と思っていたことが実は非常識であることがあります。
歴史的に見てそうであったり、知らないだけだったり理由は様々でしょうが、ある時点で正しいと考えた事は早く変更して、診療を受ける人に不利益にならないようにすべきと思います。

主婦の友社から、「キズ・ヤケドは消毒してはいけない」(副題「うるおい治療のすすめ」)夏井 睦(なつい まこと=手の外科が専門の形成外科医) が出版されています。

医療者向けには、夏井医師の他の著書があります。 (いずれも三輪書店の「創傷治癒の常識非常識」 「創傷治癒の常識非常識2」 「ドクター夏井の外傷治療裏マニュアル」) 3_3

学生時代に医学部サッカークラブでの試合で、臀部付近に大きなサッカショウ(?)を負い、イソ○ン消毒をしてガーゼをしっかり貼って散々痛い目をしてやっと治った経験があります。また2年前にコーヒードリップの途中で熱湯を手背にかけてしまい、その処置に(自分で)ソフ○チュールを貼付して痛い目にあいました。

Titleその後、インターネットサイト【新しい創傷治療】 (主宰 夏目 睦)や上記の著書で湿潤治療を知り、もっと早く知っておればと後悔しています。

最近では、家族の怪我でもこれを実践し確信を得ました。そして実際の診療でも実践するようにしています。(もっとも休日の日直時のみで、通常の呼吸器科外来では実践の場が殆どありませんが) 

同じようなことは、抗菌薬(多くは抗生物質)についても言えます。所謂「添付書」(効能書き)に書いてあることが唯一正しく、その通りに使用しなければならないと長年信じていましたが、臨床感染症専攻の医師達の著書

7_24_39_4   (『レジデントのための感染症診療マニュアル』医学書院 青木 眞 著

『抗菌薬の考え方・使い方ver.2』中外医学社 岩田健太郎 著  

『感染症レジデントマニュアル』医学書院 藤本卓司 著   『感染症診療ゴールデンハンドブック』南江堂 藤田次郎・喜舎場朝和 編集  などで学会や企業の後押しのないタイプの著書)を読むと、使用目的や使用量について眼からうろこ状態となりました。(添付書の内容が最も有効なものではないことが判ります。) 

「薬の本当の適応症」も時代と共に変わって来ているので、認可を得た時のままの添付書の内容だけを信用すると適切な診療ができません。
5_2 12月上旬に 『インフルエンザワクチンは打たないで』双葉社 母里啓子(元国立公衆衛生院疫学部感染症室長)著を読み、しきりに勧めてきたインフルエンザワクチンへの評価が自分自身のなかで揺らいで来ています。
根拠となる原論文全てに目を通す訳にもいかず、真実を知るのは困難ですが、ワクチン推進派の論文は、どうもその著者の願望に基づく推論が多いように思われます。

さて、11月20日の本稿での、 「貧乏人は医者にかかるな! 医師不足が招く医療崩壊」(180頁 『自分の健康を自分で守ろうとしなかった患者と、出来るだけの努力をしたにもかかわらず不幸にして病気になった患者の医療が、まったく平等であっていいのだろうか』)を読んでの意見を披露します。現場で診療する医師は、これらの対場の違いを区別するような医療は実施してはならず、実際にも区別しません。「医療費」で区別する制度を導入するかどうかとは別問題です。 

呼吸器科 医師 玉田二郎

 

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2007年11月20日 (火)

健康増進法第25条・受動喫煙の防止

11月3日に四国の祖谷渓に沿って祖谷かずら橋まで行き、大歩危峡の川船観光をして来ました。
祖谷渓沿いの県道は深い谷を見下ろしながらの細い曲がりくねった道で、予定時間を大幅に過ぎてしまう程でした。祖谷温泉までの途中に展望台がありそこからはるか下の川を見下ろすと、芥子粒大に見える数匹の野生猿が岩の上を移動していました。この大自然に感動していますと、途端に煙草の煙という現実に引き戻されてしまい、「こんな人里離れてなんで煙草臭いんや!」(禁煙区域ではないので、口には出さず。) あろうことか、祖谷かずら橋を眺めるコンクリート橋でも、先の煙草の主の煙を浴びてしまいました。
0711201_2  ニコチンが無いと大自然や景観にも感動できない人達! 禁煙区域なら、その人達もその時だけでも煙草を吸わずに大自然を満喫できるのに・・・・。川船観光は禁煙でした。乗船待ちの通路は禁煙でないにも関わらず喫煙者はいませんでしたが、乗船場の上の国道沿いのレストランは、ご多分に漏れず「健康増進法第25条・受動喫煙の防止」に違反した店。後からやって来た隣の席の子供連れの方々が食事前から喫煙。言うまでも 0711202_2 なく「イエローカード」(写真参照 参考ホームページhttp://nosmoke.hp.infoseek.co.jp/を食後のテーブルに置いて店を出ました。(責任者に説明する暇が無かったので。) 回転寿司・カレー・牛丼のチェーン店や倉敷平成病院は素晴らしい! イエローカードを2回置いたイオン倉敷のトンカツ店は禁煙になっていました! イエローカードを1回だけ置いたことのある倉敷駅東側のスーパーマーケットの喫煙コーナーは撤去されていました! 倉敷美観地区は禁煙区域ではないな・・・「年一回の倉敷川清掃では、煙草のフィルターが沢山採れます。」とは我が子達の証言。我が故郷の岩国城周辺は国有林で「歩きながらの喫煙は禁止」なのはせめてもの救い。そう言えば、岡山駅周辺も歩行喫煙禁止? 倉敷市役所は大丈夫だったかな?・・。
 長くなってしまいましたので、マイケルムーア監督 「シッコ」 (アメリカの、民間保険会社によるHMO健康維持機構が大半を占める医療保険に加入している人々の悲惨な状況を描いた作品) を観ての感想や、永田 宏 著 「貧乏人は医者にかかるな! 医師不足が招く医療崩壊」(180頁 『自分の健康を自分で守ろうとしなかった患者と、出来るだけの努力をしたにもかかわらず不幸にして病気になった患者の医療が、まったく平等であっていいのだろうか』)を読んでの意見は、次回以降のブログとします。       

 呼吸器科 医師 玉田二郎

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2007年10月20日 (土)

アナフィラキシー対策のためにエピペンを

涼しくなり、アウトドア派でなくても野外で過ごすのが心地よい季節です(今年は家族キャンプに行カなかったナ…)。野外と言えば、もし蜂に刺されてショック症状が出たどうしますか?(市街地で蜂に刺され、ショック状態で当院へ救急搬送された方もありましたが、無事翌日退院されました。もし病院から遠かったら…)。
今日は、アナフィラキシー対策のための携帯薬「エピペン」の話です。
蜂毒・動物咬傷(ハムスターや猫など)食べ物(蕎麦・ナッツ類など)治療薬・造影剤などによるアレルギー反応のうち、強い症状がおこり、命に関わるような状態をアナフィラキシーと言います。治療の第一目標は、窒息を防ぎ血圧を保つことです。そのために医療機関では、エピネフリン(アドレナリン)の注射をまず行います。しかし治療開始が遅れるとショック状態が進み重篤になってしまいます
「エピペン」の成分はエピネフリンです。特殊な針付き容器に1回分のエピネフリンが入っており、これを貴方自身で太モモに筋肉注射します。(デニムのジーパンの上からでも注射できるアメリカ製品で、ノック式ボールペンをやや太くした位の大きさ。練習用の空容器も付いています。) 医療機関での治療を待たずに早く対処するために、強いアレルギー反応が起こり易い人は、この「エピペン」を携帯することが望まれます
エピペンは保険薬ではないので自費診療となります。また処方は登録医のみ行なうことができます倉敷平成病院では数名の登録医が処方しています
アナフィラキシーで命を落とす人は日本で毎年50~60人と言われています。
エピペンが使える(必要な)人は、「蜂毒、食物及び薬物等に起因するアナフィラキシー反応の既往のある人、またはアナフィラキシーを発現する危険性の高い人」です。このような方は、少しでも危険を回避して、安心してアウトドアを楽しめるようにしましょう。

倉敷平成病院 呼吸器科医師 玉田二郎

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2007年9月20日 (木)

禁煙外来について

今 このブログを読んでいる貴方は、煙草を吸いながらでしょうか。Kinen_1 今日は、倉敷平成病院での 禁煙外来についてお知らせします。平成18年6月から「ニコチン依存症」としての保険診療をおこなっています。
厚生労働省が言うところの「禁煙成功者」は、禁煙指導(3ヶ月間5回診察)終了後3ヶ月間禁煙を継続している人です。
当院では、本年9月15日までに60人の新規開始「患者さん」がおられます。

本年6月18日までに開始した46人のうち、5回の診療が終了できた人は12人(29%)でした。診療中央社会保険医療協議会の調査では、5回の診療を完了できた人は3割で、その内、3ヵ月後まで禁煙を続けている人は59%(開始者の17.7%)ということです。当院では本年3月16日までに開始して5回診療を終了した9人のうち7人(78% 開始者35人の20%)が終了後3ヶ月後も禁煙が継続していました。当院の今までの結果は、全国レベルよりやや良好でした。

 中断した方の中にはニコチン貼付薬にかぶれて止めた人もおられます。しかし、禁煙を導入するためのニコチン製剤は、使わなければならない物ではありません。私の個人的選択となりますが、「リセット禁煙のすすめ」という500円の本を読むことをお勧めしています。この本の要旨は、「煙草とは自分にとって何なのか」を問い直すことによって、煙草の持つ「ニコチンの罠」に気付き、有害無意味な煙草を心底から止めようとする気を起こさせるというものです。
 ニコチン依存症治療(禁煙外来)は、他の診療で既に受診中の方でも大丈夫ですが、入院中は開始できません。残念なことに喫煙年数の少ない人(1日本数×年数が200未満の方)は、厚生労働省が「ニコチン依存症」と認めていないので、保険診療が出来ませんが、当院では自由診療も行なっています。診察料は保険診療の場合とニコチン貼付薬の負担分が異なるだけです。
 禁煙に成功する人は、まず煙草への要求が減ります。その後、他人の喫煙が羨ましくなくなり、無関心となります。「禁煙」が確立する頃には他人の喫煙が嫌になり(文字通り煙たくなる)、忠告したい気持ちになります。
私事で恐縮ですが、私自身も10年前にこの経過をたどって禁煙し、その状態を続けています。
血管障害(脳卒中、狭心症・心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症)、糖尿病、肺気腫・慢性気管支炎、胃潰瘍、歯周病、がん治療中、骨折、手術を控えている、などの方は病気の悪化や経過の悪化を防ぐ為に是非禁煙を実施して下さい。もっとも発病以前に禁煙するのがベストです。
煙草を吸いながら読み終えた貴方は、もう次の1本が欲しくなっていませんか? それは何故なのでしょう。煙草は貴方に何をもたらしてくれているのでしょうか。それがお知りになりたければ、倉敷平成病院呼吸器科外来でお尋ね下さい。予約不要ですが、出来れば受診前にお知らせ下さい。 

倉敷平成病院 呼吸器科 玉田二郎
連絡先 倉敷平成病院 086-427-1111 (予約担当へ)

★禁煙について、以前紹介した記事はこちらです

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